スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
ラグビーの「獣性」が凝縮された、
イングランドとジョージアの奇祭。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by Keijiro Kai
posted2020/07/29 20:00
イングランド中部のアッシュボーンで、17世紀より続く「Shrovetide Football」の1コマ。写真集『骨の髄』より。
人間は時に「獣性」を開放する必要がある。
近代スポーツの歴史は、野蛮から理性への進化の過程でもある。
マスフットボールはこの後、パブリックスクールでの「校庭でのフットボール」、あるいは「ラグビーフットボール」、アイルランドでいまも行われている「ゲーリック・フットボール」に枝分かれしていくが、人数やオフサイド・ルールなどが制定され、近代化が進んだ。
また、産業革命によって鉄道が発達し、ルールのすり合わせが必要となって、整備が進んだことも忘れてはならない。
19世紀、イングランドを中心にルールを作っていった先人たちは、人類に大きな財産を残したのである。
そして21世紀を迎えたいま、競技の安全性が優先されるようになったものの、荒々しさは現代に伝えられている。
甲斐さんの写真は、フットボールの原初の形態が21世紀にも生き残っていることを伝えてくれる。
人間は、時に己の持つ「獣性」を解放する必要があることを。
世界5カ所の写真は、フットボールの文化を伝える意味で、とても貴重な史料だ。