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ジェッツ原修太が難病公表を決断。
泣くより笑ってほしい2年の闘病記。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byCHIBA JETS FUNABASHI
posted2020/07/22 19:00
ジェッツに欠かせない選手に成長した原修太。筋肉もメンタルも伊達ではない。
同情ではなく、勇気を与えるために。
「当時は、みんなに心配してもらいながらプレーするのは『ちょっと違うな』と思ったんです」
病気を公表していれば、関心は持ってもらえただろう。そしてミスをしても「病気だったから仕方がない」と思われたかもしれない。
でも原は、自らの病気を周囲の同情を買うために語りたくはなかった。
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誰かに勇気を与えるために、公表したかった。
潰瘍性大腸炎は難病に指定されているだけあって、完治はない。原の場合は「寛解」といって、いまは全く症状が出ていない状態だ。
それでも2カ月に1回、病院で点滴を受ける。あくまでも予防の意味合いが強く、千葉県の自宅から都内まで行くのも、めんどくさいというよりも、「あぁ、また帰ってきたな」という感覚に近い。
「身体も順調で、前よりもコンディションは良いくらい。だから、むしろプラスだったのかな、この病気は。自分を変えてくれたんですから」
願うのは、病床でスマホにかじりついた自分と同じような感覚を、誰かに味わってもらうこと。
あのときは同じ病気にかかりながらも活躍しているアスリートがたくさんいると知って、前を向くことができた。
若いアスリートにとって、プロスポーツ選手を目指す子どもにとって、あるいは病に冒された子を持つ親にとって、希望を与えられる存在になりたいのだ。
「プロになってから、もっと勇気を与えてほしいと言われたり、『勇気をもらいました』とかいってもらえました。ただ、バスケの試合を通してしか、自分は与えられていないのかなと思っていて……」
目の前の試合でベストをつくすことで、伝えられるものには大きな価値がある。ただそれだけではなく、試合以外の場面でも伝えられるようになりたい
ひそかに誇りに思っていること。
「今しかできないことって、いっぱいあると思うんですよ。野球やサッカーと比べたら影響力はまだ小さいものかもしれないけど、現役のプロ選手だからこそ注目してもらえる。それなのに何もしないというのはもったいないじゃないですか?
難病の人でなくても、何かにつまずいていたり、悩んでいる人たちが何かを感じるきっかけになってくれればいいですよね」
こうやって公表したのをきっかけに、これからは子ども病院の子どもたちとの交流などの機会を少しずつ作っていけたらと考えて、クラブのスタッフと打ち合わせをしている。
原には、ひそかに誇らしく思っていることがある。
腸は食事の消化とかかわる臓器だ。ともすれば、体重減少に直結してもおかしくないのに体重が経るどころか、増すばかり。身体は年々大きくなっている。
187cmで98kgと、瞬発力の求められるスポーツの選手としては珍しい。他に同じような体格と運動量を日本人で維持しているのは、宇都宮ブレックスで、かつては和製バークリーの異名をとった鵤誠司くらいだろう。
「あの身体をみていたら、病気の影なんて全く見えないよね」
そう感じた人が前向きになってくれたら最高だ。原はそう考えている。