バスケットボールPRESSBACK NUMBER
ジェッツ原修太が難病公表を決断。
泣くより笑ってほしい2年の闘病記。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byCHIBA JETS FUNABASHI
posted2020/07/22 19:00
ジェッツに欠かせない選手に成長した原修太。筋肉もメンタルも伊達ではない。
「退院したら、激辛料理を食べにいこう!」
幸いチームメイトも、いつもと同じ様子で接してくれた。入院して最初にかけつけてくれたにもかかわらず、心配する素振りも見せなかったのが、当時は日本代表の合宿のために都内に滞在していた富樫勇樹だった。大量のマンガ本と有名女優の写真集を手に笑顔でやってきた。
日本人選手のなかでチーム最年長の大宮宏正は、お腹に悪そうなブラックジョークをまじえつつ、こんなことをいってきた。
「退院したら、激辛料理を食べにいこう!」
ADVERTISEMENT
深刻さとは無縁。彼らが普段通りに接してくれたことも気持ちを前向きにしてくれた。
ただ、当時病気について知らされていたのは、チームメイトと現場のコーチングスタッフをのぞけば、当時社長を務めていた島田慎二と、当時のGMの佐藤博紀だけだった。
しかも佐藤らは、病気の事実だけがひとり歩きしてしまうことを心配してくれていた。原を放出したいわけではなかったが、安易に公表することで将来的に原の獲得に動くチームが「アイツは病気があるからヤメておこう」と判断する状況を懸念した。ファンに向けた発表が「体調不良」という表現にとどまっていたのもそのためだ。
彼らに対しては、こう伝えていた。
「いずれは発表したいです。でもちゃんと復帰して、プレータイムを手にしてからにしたくて」
(2020年の3月で中止に追い込まれた)昨シーズンの終盤から発表のタイミングを広報らと相談していたが、新型コロナウィルスの流行により、それどころではなくなった。まだ予断を許さないものの、社会が新たな日常を模索するこのタイミングで公表することにした。
機は熟した。
原の復帰でチームは勝ち続けた。
昨シーズンの序盤、ジェッツは不振に陥っていた。原は17試合目にシーズン初スタメンを飾ると、そこから先発で出場し続け、チームの課題だったディフェンスを激変させた。その成績の変化は顕著だった。
開幕からのチームの成績:
9勝7敗(勝率.562)
12月7日に原がスタメンに復帰してから、ケガで離脱する2月9日までの成績:
16勝4敗(勝率.800)
「納得しているわけでもないし、自分がスタメンに入ったから全て良くなったと言うつもりもないですけど、そうやって勝てるペースが上がっていったのは素直に嬉しかったです」
原は謙虚に語るが、Bリーグが始まってからの4年間で、最も存在感を放っていたのが昨シーズンであることに異論の余地はない。