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鈴木誠也は内野ゴロでも全力疾走。
非でも脱でもない「着・完璧主義」。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/07/21 11:50

鈴木誠也は内野ゴロでも全力疾走。非でも脱でもない「着・完璧主義」。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

打撃成績は上位に入るも、チームは7月に入って4勝10敗1分と苦戦が続いている。

無安打に終わった7試合は1勝6敗。

 今季もがく姿は、波に乗れないチーム状況によるものもあるだろう。リーグトップのチーム打率を誇る一方で、チーム防御率は同4位の4.51。特に救援防御率が4.89で、5度の逆転負けを喫している。

 チームとしての課題は明確も、主砲はそこを見ていないような気がする。1勝6敗の戦績は、鈴木誠也が無安打に終わった7試合のチーム結果だ。5打数4安打しても、打てなかった1打席を悔しがるタイプ。他球団の包囲網をかいくぐりながら冒頭の好結果を残しながらも、無安打と敗戦の二重苦が色濃く刻まれているのではないか。

内野ゴロでも全力疾走を貫く。

 佐々岡真司監督が「一体感」を掲げる広島だが、まだ強固な一枚岩にはなれてはいない。チームは勝つことでまとまっていくとも言われるが、苦しいとき今だからこそ、2018年までに3連覇した広島の真価が問われる。

 鈴木誠也はまだチームの重しとなるほどの年齢を重ねていない。主砲であっても、スタメン野手では年少組。バットでチームの勝敗の責任を背負っても、言葉でチームメートを鼓舞する立場ではない。結果とプレーで示すことしかできない。

 開幕から、どんな正面の内野ゴロでも全力疾走を怠らない。当たり前のようで当たり前ではない。特に'17年に右足を手術したことのある鈴木誠也ならなおさらだろう。

 かつて「試合に出られない選手がいる中でスタメンで出ている以上、責任がある。結果はわからないけど、一生懸命プレーしないといけない」とグラウンドに出る者としての使命を口にしていたことがある。

 あれからチーム内での立場は変わっても、その姿勢を貫き通している。立場が変わったからこそ、より貫き通さなければいけないのかもしれない。

【次ページ】 「4番があれだけ走っているんだから」

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