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羽生さんは2年後、ひふみんは8年後。
藤井聡太棋聖、2つ目のタイトルは?
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by日本将棋連盟
posted2020/07/17 19:00
棋聖戦第4局、「矢倉」の戦いを制してタイトルを獲った藤井棋聖。2つ目も早ければ8月中に獲得できる。
“生ける将棋の神”羽生善治九段の場合は?
加藤九段にいたっては、中学生棋士としてデビューしながら大山十五世名人の壁に阻まれ続けた末に初の十段戦制覇を果たしたのに、2つ目のタイトルはさらに8年後だった。
どれほど勝負の非情さを味わってきたかを想像すれば、「ひふみん」のニコニコ顔に対する印象も変わるはず。
米長永世棋聖、森内九段もそれぞれ中原十六世名人、羽生善治九段という大きな壁がそびえる中で、それを乗り越えた大器晩成と言えるだろう。
ここまで紹介してきてやっぱり気になるのは、羽生さんだろう。現在までタイトル通算99期。“生ける将棋の神”のような存在の羽生善治九段は、どのような歩みなのか。
<羽生善治>
・初タイトル:19歳(竜王/1989年)
・2つ目:20歳(棋王/1991年)
1988年度、羽生五段(当時)は加藤一二三九段戦での伝説の「5二銀」を契機に、次々と名人経験者を打ち破ってNHK杯初制覇。そして平成の世となった1989年、第2期竜王戦七番勝負で島朗竜王を破り、タイトル獲得を19歳2カ月で成し遂げた。
竜王の座こそ翌'90年に谷川九段に奪取されたものの、その4カ月後('91年3月)に棋王を奪取しているのだから、やはり凄い。
それも2つ目のタイトル奪取である棋王から2018年の年末まで、27年半以上も何らかのタイトルを保持していた。あらためて羽生九段が不世出の大棋士だと再確認できる。
“7年後の藤井聡太”はいくつタイトルを持っているか。
なお羽生九段が七冠を独占したのは1996年のことで、初タイトルから7年で歴史的偉業を達成している。
それを踏まえると、“7年後の藤井聡太”がどれくらいタイトルを手にしているのか――。未来を想像するだけでも、さらに楽しくなる。
もちろん、歴戦のトップ棋士がこのまま手をこまねいているはずはない。
木村王位は連敗スタートとなったものの、昨年の王位奪取時も同じく連敗しながらも最後は4勝3敗。史上最年長となる46歳3カ月で初タイトルを獲得したし、何より「将棋の強いおじさん」と言われるトーク力だけでなく「千駄ヶ谷の受け師」と称される粘り腰、そして実直な性格に心打たれる。
藤井棋聖の2つ目のタイトル獲得なるかに注目するだけでなく、王位戦の一局、そしてお互いの凄みを感じる一手を堪能したい。