eスポーツは黒船となるかBACK NUMBER

F1の凄腕カメラマンがeスポーツに。
「現実では絶対に撮れないものを」

posted2020/07/22 20:00

 
F1の凄腕カメラマンがeスポーツに。「現実では絶対に撮れないものを」<Number Web> photograph by Gran Turismo_Clive Rose

クライブ・ローズ氏が『グランツーリスモ SPORT』を撮影した1枚。バーチャルでこそ写せるアングルだ。

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八木葱

八木葱Negi Yagi

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Gran Turismo_Clive Rose

 eスポーツの世界はファンもプレイヤーも拡大して順風満帆に見えるが、足りていないものもある。その中で忘れられがちだが、重要な要素の1つがカメラマンだ。

 スポーツがより多くの人の心を動かし記憶に残るうえで、写真の持つ力は大きい。優れた写真は目に入った一瞬でその競技や人物の魅力を伝えることができる。動画のように再生ボタンを押す必要もなく、一瞬でだ。

 つまり競技の魅力や文法を知り尽くしたカメラマンがいることは、その競技が成長するうえで大きな力になる。

 その意味で、モータースポーツを題材にした『グランツーリスモ SPORT』は大きなアドバンテージを手に入れたと言えるだろう。

『グランツーリスモ SPORT』の撮影陣に、夏冬のオリンピックやF1界で25年以上のキャリアを持つトップカメラマン、クライブ・ローズ氏が加わったからだ。彼が所属するGetty Imagesは『League of Legends』などの人気eスポーツとも提携する、世界最大のフォトエージェンシーだ。

「僕はアイルトン・セナが亡くなった1994年にF1を撮りはじめて、それから世界中のサーキットを回り続けています。カメラマンになる前は本当はドライバーになりたかったけれど残念ながらその才能はなくて、それでもモータースポーツに関わるのを諦めたくなかった。それなら、誰よりもかっこいい写真を撮るカメラマンになりたいなと思ったんですよ」

なんとかして人と違う写真を。

 実はモータースポーツはスポーツの中でも、固有の難しさを抱えている。選手の顔はヘルメットで見えないし、静止画の中に”スピード”は存在しない。それでもローズ氏がトップカメラマンと呼ばれるのは、彼がモータースポーツ写真の常識を更新してきたからだ。

「F1では毎年同じサーキットの大体同じカメラポジションへ行くことになるけれど、いつもと同じ写真を撮っても仕方ない。ポジション、角度、それにカメラやレンズの種類を変えることで写真は全然違うものにできる。そうやって、なんとかして去年の自分と違う写真を撮ってきたんだ。

 中でも大切なのは、サーキットを調べること。たとえば日本の鈴鹿は、晴れた夕方には信じられないくらい美しい写真が撮れるけど、それには時間や天気、機材のセッティングを知り尽くしていることが必要なんだ。だから毎年日本へ行く数週間前からずっと天気予報を見てるんだよ(笑)。今年は日本GPがなくて本当に残念だね」

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