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鍵山優真の驚くべき4回転ジャンプ。
父の理論、遺伝、基礎練習で花開く。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2020/07/12 20:00
今年2月の四大陸選手権、SPの演技後にガッツポーズを見せる。自己ベストを更新する91.61点を獲得。冒頭の4回転トウループは3.26点の加点を得た。
無良崇人も驚く4回転トウループの跳び方。
膝と足首と股関節。この3つを連動させることで、鍵山親子の猫足着氷は生まれるのだ。この日も、優真はエレガントなキャッチフットスピンに加え、反対回りのキャメルスピンなど、多彩なポジションのスピンを研究していた。
さらに、この着氷よりもスケート関係者を最も驚かせているのは、4回転トウループの跳び方だ。4回転ジャンプに定評があった無良崇人氏もこう指摘する。
「鍵山選手の4回転トウループは、すごい跳び方をしています。左手をうしろに引っ張って、そこに身体をついて来させるという跳び方。
普通は、跳びながら左後方に身体をもっていくけれど、鍵山選手は最初から後ろに回転軸を作っておいて、そこに行く。よほど体幹が強くないと、あれだけの体重移動はできません」
「技術的な話なので、そこは企業秘密です」
スロー再生で見るとよく分かるのだが、優真の4回転トウループは、後ろに引いた左手に向かって回転しながら体重移動させていく跳び方をする。この跳び方だと、テイクオフの瞬間から回転を始めることができる。
一方で、トウループのセオリーは“左手を前方に伸ばし、肩が先に回らないように構える”というもの。この跳び方だと、空中に跳びあがり、左から右へと体重移動をした後に回転が始まる。
セオリーから外れた優真の飛躍は、効率的で、かつダイナミック。ジャンプについて質問すると、正和氏は笑いながら答えた。
「技術的な話なので、そこは企業秘密です。でも体重移動を重要視するのは、自分が選手のときに意識していた練習法ですね。
体重移動をメインにしたジャンプというのは、絶対的にスピードや滑りの力が必要になります。そのためにはスケーティングの基礎を磨かなければなりません。
4回転を練習し始めてから身に付けたのではなく、スケートを始めた時から厳しく言って、ずっと土台をしっかり作ってきた。急に出来るものではありません」