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苦しみぬいた大迫勇也の今季総括。
内なる激情が極限まで達した瞬間。 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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posted2020/07/10 11:50

苦しみぬいた大迫勇也の今季総括。内なる激情が極限まで達した瞬間。<Number Web> photograph by AFLO

ブンデスリーガ入れ替え戦で先発出場した大迫勇也。怪我などで苦しいシーズンとなったが、最後に躍動を見せた。

機能しなかった大迫中心の攻撃陣。

 昨季のブレーメンは、コーフェルト監督が用いた“フレキシブル3トップ”が効果的に機能してチーム成績が向上しました。

 クルーゼを頂点に置き、左右に配備された大迫、マルティン・ハルニクなどのユニットが頻繁にポジションを入れ替えて相手守備を幻惑。得点を挙げるアタッキングスキームはブレーメンの代名詞的な戦術として認知されるようになりました。

 ただし、当の大迫からしてみると、スタート地点がサイドになるポジションでは自らの特長が生きないと認識していて、度々相手ゴールに最も近い「センターでプレーしたい」とも発言していました。そして2019-20シーズンにおいては先述したようにクルーゼがチームを去り、コーフェルト監督が大迫を攻撃陣のファーストチョイスと捉えたことで、ついに捲土重来の時期が訪れたのです。

 しかし結局、大迫を3トップの頂点に据えた攻撃陣は機能しませんでした。これは大迫自身のパーソナル能力だけに起因するものではないと考えます。

 コーフェルト監督が志向する“フレキシブル3トップ”は戦術眼に長け、特定エリアにこだわらずにフィニッシャー、チャンスメーカーと様々な役目を全うするクルーゼという存在がシステムの柱だったと思うからです。

キャプテン、モイサンデルの言葉。

 今季のブレーメンは序盤戦こそ五分五分の成績で中位を保っていましたが、昨年11月あたりから突如成績が伸び悩みました。その要因のひとつとして大迫の負傷離脱があったのは事実ですが、彼以外の攻撃陣の不調も影響していたのは明らかです。

 またウィンターブレイク前後の時期は大量失点での敗戦も目立つようになり、守備陣の崩壊が目に余るようにもなりました。ドイツ国内で新型コロナウイルスが流行していない昨年12月、アウェーのバイエルン戦(●1-6)やホームのマインツ戦(●0-5)を現地取材しましたが、そのときのブレーメンの選手たちは自信を喪失して意気消沈し、饒舌なコーフェルト監督も言葉少なに会見を終えるなど、チーム状態が急速に悪化している印象を受けました。

 唯一の希望は、経験豊富で人格者でもあるキャプテンのニクラス・モイサンデルを中心にギリギリで結束力を保てていたことです。僕はリーグの終盤戦でリカバリーすることを願いながら、黒星を重ねるブレーメンを見ていました。当時、モイサンデルが敗戦後のミックスゾーンで多くの地元記者に取り囲まれる中で、絞り出すように発した言葉は今でも僕の胸の内に残っています。

「今日の敗戦は恥ずべきものだ。戦術どうこうの問題でも、監督どうこうの問題でもない。今日ほど悪い試合はあってはならないこと。これはチーム全体が考えるべき問題なんだ」

 窮地に陥ったときに重要なのは、それに関わるものが如何に周囲のことを考えて振る舞うか。その意味では、今季のチームキャプテンに34歳のフィンランド人、モイサンデルを抜擢したコーフェルト監督は慧眼の持ち主なのかもしれません。

【次ページ】 逆境下で大迫が出した成績。

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