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J再開!千葉vs.大宮の現地取材詳報。
非日常の迫力と音、喝采なき初得点。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byTsutomu Takasu
posted2020/06/28 09:00
J1に先駆けて再開したJ2。千葉vs.大宮はハードワークを徹底するチーム同士の対決とあって激しい試合となった。
肉体と肉体がぶつかる音。
スタジアムは静まり返っていたわけではないのだ。スタンド上部に設置されたフクアリの記者席に座っていると、ピッチレベルの指示はリモート応援にかき消され、ほとんど聞こえなかった。事前にクラブスタッフがピッチで音量テストを行い、選手たちの耳に届くかどうかをチェックし、レフェリーの通信に支障をきたさないかなども確認したという。
記者たちが密かに楽しみにしていた試合中の細かな指示までは耳に入らなかったが、球際で肉体と肉体がぶつかる音などは聞こえてきた。
千葉の尹晶煥監督、大宮の高木琢也監督はともにハードワークを徹底し、守備に重きを置く指揮官。この日は大宮の激しい当たりが際立った。勢い余ってファウルになることもあったが、ピッチによく倒れていたのは千葉の選手。記者席にも接触プレーでのうめき声がはっきり届き、タッチライン沿いで尹晶煥監督がレフェリーに日本語で猛烈に抗議する声もキャッチできた。勝ち点3を懸けたバトルは、とても練習試合のそれではない。
リモートマッチで初づくし。
大宮が激しく球際で戦えたのも、規律を守り“ディスタンス”を保っていたから。5-4-1の陣形できれいな守備ブロックをつくり、前後左右の選手たちは一定の距離をキープ。とにかく隙間がなかった。自陣に敷いた守備網にボールが入ってくると、すぐさま相手に体をぶつけ、攻撃をストップ。前半終了間際にFKから小野雅史のリーグ戦初ゴールで先制し、後半も瞬時につぶしに行ける距離感を崩さず、そのまま逃げ切りに成功した。
終了の笛がなって10分もしないうちにゴール裏に設置された看板などの撤収作業に入り、照明も少しずつ消えていく。大宮は開幕2連勝としたが、試合後の余韻を味わう間もなくロッカールームへ。それでも、初めて主役となった大卒2年目の23歳は、リモート会見で満面の笑みで浮かべていた。
「キック力には自信があったんです。モチベーションを落とさず、覚悟を決めて練習してきました」
記念すべきゴールである。スタンドのサポーターから拍手喝采を浴びることはできなかったが、初得点の喜びは変わらない。
そして、最後に画面越しの会見場に現れた大宮の大卒ルーキーの西村慧祐も、リモートマッチがメモリアルな1試合となった。
「無観客でのデビュー戦は、特別なものになりました。観客のいるなかでプレーした経験がないので比べることはできませんが……」
初のリモートマッチで初づくし。再開初戦の白星を含め、大宮は“三重”の喜びで包まれていた。