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ラグビー新リーグはどうなる?
谷口真由美室長を野澤武史が直撃!
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/06/28 11:40
2021年秋以降の発足を目指すラグビー新リーグ。改革を先導する谷口室長は、現時点での構想を明かした。
選手を置き去りにしない協議を。
谷口 2024年以降のフォーマットですが、ここからは必達義務になってきます。たとえばアカデミーについては、女子チームは「推奨」になりますが、U12、U15チームは「保有」が参入要件になってきます。
野澤 僕は日本協会でユースを担当していますが、ユースの貢献は国力に繋がります。それを昨年のワールドカップで体現したのが、2023年に母国開催を控えているフランスです。結果はベスト8でしたが、20歳以下のワールドカップ連覇に貢献した若手選手をそのままフル代表に入れ、見事にチームを若返らせました。アカデミーの保有に舵を切ったことについても賛同します。
谷口 若い皆さんをないがしろにはしたくないですよね。若年層の普及育成にお金が投入できるようにしていかなければいけません。ウィズコロナ、アフターコロナでは世帯収入が下がる家庭の方が明らかに多くなると予想されるので、経済的に厳しい場合には、たとえばスパイクが買えなくなったお子さんにスパイクをプレゼントする「スパイク基金」のような仕組みも考えたい。ラグビーを続けたくても続けられない、お金がなくて合宿に参加できない、というようなお子さんを1人でも減らしていきたいと思っています。
野澤 組織はピーター・ドラッカーの言葉を借りるなら「社会の公器」です。組織のために人がいるのではなくて、人のために組織がある。ですから、ラグビー協会や新リーグといった資産にレバレッジをかけて、最終的には選手、スタッフが最高に輝いてもらうことが目的だと思っています。収益も大事ですが、やはり選手とスタッフが最高に輝けるリーグができてほしいですね。
谷口 選手のみなさんを置き去りにしたくないと考えていて、リーダー会議の稲橋良太さん(クボタ※今シーズンで引退)や選手会会長の川村慎さん(NEC)とも話し合っています。チームのGMや部長、会社側と決めていけばいい、と思いがちですが、選手を置き去りにしてはダメだということは忘れないようにしたい。選手が何を考えているのか、どんな不安を持っているのかを把握しながら丁寧に向き合っていきたいなと思っています。
野澤 今回お話しさせて頂くにあたってチーム関係者に話を聞いたんですが、新型コロナによるリーグ中止で新シーズンまで期間が空くことや、進捗状況が見えないことについて不安を感じている人がいました。話が上層部で止まっている可能性もあります。
谷口 開示できる情報は開示していこうと思っています。ちょうど先日、ビデオ会議を通じて約300人の現役選手にスライドを使って新リーグ構想の説明と、SDGsのレクチャーを行ったところです。「何か意見があったら準備室にメールをください」とも伝えさせてもらいました。やっぱりチームを通して、となるとなかなか伝わらない部分もありますよね。
グラウンド外での選手の価値を上げる。
野澤 試合に出ていない選手にも手を差し伸べて頂きたいと思っています。僕は神戸製鋼に在籍した7年間、ほとんど試合に出場せずに引退していますが、その本人から言わせてもらうと、試合に出場できない選手、チャンスをもらえていない選手にはものすごいエネルギーが溜まっていると思います。彼らの「貢献したい」という意欲は非常に強いと確信します。
谷口 やっぱりSDGsの推進マッチをする時に、ぜひそういう選手達に前に出てきて頂きたい。私は6歳から16歳まで10年間、近鉄ラグビー部の合宿所で暮らしていましたが、怪我や病気に泣いた選手、たまたまポジションが潤沢な年に入って苦労した選手をたくさん見てきました。子供ながらに彼らの何とも言えない熱量は感じていましたね。納会で一番面白いのは表に出てこない選手だということもよく分かってます。そういう選手が活躍する場を提供していきたいと考えています。
野澤 グラウンドにしか価値がないわけではない。そういった部分に目を向けて頂けるのは、僕としても自分のことのように嬉しいです。
谷口 新リーグでは一般向けのファンクラブを開設して頂く予定なので、そこでのアイデアを出してもらったり、引退後に運営に関わってもらえたらいいなと思っています。一方で、早めに引退してレフリーに転向していけるキャリアパスなども考えていきたい。見えている華々しい期間だけがラグビー選手の価値ではない、というところは新リーグを通して伝えていきたいですし、引退後のラグビー選手にはぜひ社会のリーダーになってほしい。そのための研修の機会も作っていきたいですね。
野澤 SDGsをしっかりやることも大前提ということで、ラグビーの新リーグが今後の組織の作り方、運営の仕方のひとつのロールモデルになっていくといいなと感じました。
谷口 ありがとうございます。ただSDGsなどは参謀である瓜生さん(靖治/新リーグ法人準備室副室長)の知見なんです。実は瓜生さんが中心になって、いまラグビーの哲学を言語化するというプロジェクトもやっています。お子さんから日本代表までが使える日本ラグビーの合言葉を温故知新で再定義したんです。近いうちに発表できると思いますよ。