プロ野球PRESSBACK NUMBER
筒香嘉智は亀で、森友哉はうさぎ。
恩師が語る2人の違いと共通点。
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph byRyunosuke Seno
posted2020/06/28 11:50
彼らの野球の原点とも言える堺ビッグボーイズでの恩師・瀬野竜之介を挟んで森友哉(左)と筒香嘉智。
「野球を取ったら何も残らないでは……」
本来ならメジャー1年目を過ごしていたはずの今シーズン。筒香は目下、新型コロナウィルスの影響で一時帰国を余儀なくされている。
日本では約3カ月遅れでNPBが開幕したが、MLBはようやく7月24日前後に開幕することが発表された。
長く待たされた形になったが、瀬野代表によると、筒香は黙々とシーズンに向けて準備をしているという。
瀬野代表は筒香の家族とも親しい関係にあったのもあって、スポーツウェアを扱う会社を経営するかたわら、プロ1年目から筒香のマネジメントをしている。ただし、オフのテレビ出演などのブッキングはせず、もっぱらいち社会人としての人間教育を重視したアプローチをしてきたという。
「野球選手、アスリートは人としてリスペクトされる存在であってほしいのです。高卒でプロに入るような選手は、筒香もそうですが、子供の頃から野球漬けで、高校では寮生活というパターンが多いです。あまり学校の勉強もしてませんし(笑)、社会のことを何も知らずに、プロの世界に飛び込む。
それでも結果を出せば、若くして大金を手に入れることができます。それは確かに1つの成功ですが、野球しか知らない、野球を取ったら何も残らないでは、本当に尊敬されるアスリートにはなれないかと。
ですから筒香にはプロで認められるようになってからも、『人としてリスペクトされる存在であってほしい』ということを言い続けたんです。人として成長すれば、野球選手としても成長できるのではないでしょうか。筒香からすれば、時にはうっとうしく感じる時期もあったと思いますが(笑)」
人間力も磨いてきた筒香だからこそ。
2019年1月、筒香は外国特派員協会で記者会見を開き、若年層に対する野球指導法の問題を提起した。現役選手がアマチュア球界について、公の場で言及するのは極めて異例のことである。
現役選手の言葉には重みがあるが、こうした場での発信に説得力を持たすには、人間性も求められる。野球の技術だけでなく、人間力も磨いてきた筒香だからこそ、多くの人が耳を傾けたのだろう。