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筒香嘉智は亀で、森友哉はうさぎ。
恩師が語る2人の違いと共通点。
text by
上原伸一Shinichi Uehara
photograph byRyunosuke Seno
posted2020/06/28 11:50
彼らの野球の原点とも言える堺ビッグボーイズでの恩師・瀬野竜之介を挟んで森友哉(左)と筒香嘉智。
「筒香が亀なら、森はうさぎですね」
昨年初の首位打者となり、シーズンMVPとベストナインにも輝いた西武の森友哉も、堺ビッグボーイズの出身だ。筒香の4期下にあたる森は、筒香とは正反対のタイプだったという。
「小学時代からオリックスジュニアで活躍するなど有名な子で、入って来た時から、なるほどと思わせる技術を持ってました。身体能力も優れていて、なんでもすぐにできちゃうんです。
筒香が亀なら、森はうさぎですね。勝手にぴょんぴょん伸びていった。毎年納会には来てくれますが、ウチにいたから今があるとか、そういうのはないと思いますよ(笑)」
下級生時代から大会に出場し、捕手だけでなく投手や野手もこなす万能な選手でもあったが、手を焼いたのがやんちゃぶりだった。瀬野代表は「ホント、お伝えできないようなこともいろいろありましたよ」と笑う。
ある時、このままではせっかくの才能を埋もれさせかねないと、森に「もうやんちゃはしない」と約束させた。ところが、舌の根も乾かないうちに、森がやんちゃグループとたむろしているところに遭遇する。瀬野代表は約束を破ったことが許せなかった。「お前、俺との約束破ったな」。飛びかからんばかりの勢いで森を叱責する姿に、仲間たちも呆然と立ちすくんだ。ひとしきり“本気の説教”が終わると、瀬野代表は仲間たちにこう諭した。
「この子はな、野球を一生懸命やってる。だからそれを応援してくれへんか。いっぺん、試合も見に来てや」
後日、そのやんちゃグループは本当に森の試合を見にやって来た。瀬野代表は歓迎し、一緒に試合を観戦したという。それ以来、森は問題を起こすことが少なくなった。
「いい意味で上手く抜けよと伝えました」
もう1つ、森について懸念していたのが、公称170cmの体だった。
「高校に入って、あの小さな体で無理したらすぐに壊れると心配してました。ですから練習もやり過ぎるなよ。いい意味で上手く抜けよと伝えました」
結果的に森は大きなケガをすることなく、大阪桐蔭高時代を過ごした。甲子園での活躍もよく知られている通りである。
「いい選手は、これ以上追い込むと危険、というシグナルを察知できる気がします。一生懸命にやるのは大事ですが、ケガをしたら元も子もない。筒香にもそういう能力はありましたね」