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ガットゥーゾ直伝の献身性が開花。
ナポリがユーベを破りコッパ優勝。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/06/23 11:40
コッパ・イタリア優勝でナポリの選手たちに胴上げされるガッドゥーゾ。やはり熱血男には熱いチームカラーが似合う。
まるで2006年W杯アズーリのように。
マクシモビッチは、本来であれば3番手のCB。ところがコスタス・マノラスが筋肉系の怪我でベンチに入るのがやっとという状態の中、代役という言葉では失礼なほど質の高いプレーを見せつけた。空中戦は譲らず、ボールを奪えば安定したパス出しでユベントスのプレッシングをいなした。
ユーベの運動量が落ちた後半は、1月にインテルから移籍したマッテオ・ポリターノが途中出場で次々にチャンスを作る。後半のナポリは、ボールポゼッションもシュート数もユベントスを上回った。
ジャンルイジ・ブッフォンの好セーブにより得点は奪えず、PK戦での決着となったが、結果はナポリの勝利。1人目のディバラのキックは試合中から大活躍のメレトがストップ。ユーベ側にミスが出た一方、ナポリは全員が成功して勝負を決めた。かつてあのアリゴ・サッキは「PKに偶然なし」と語ったが、その言葉通りの結果となったわけだ。
この試合で思い出したのは、2006年W杯のイタリア代表の姿だ。全員がチームのために走って役割をこなす。そのハードワークの中心にいたのはガットゥーゾその人だったが、彼は監督としてナポリを率い、その精神を伝えた格好となった。
誰よりも身を粉にするインシーニェ。
振り返れば、ガットゥーゾ就任前のナポリは一体感とは程遠いムードだった。選手、監督を含めたコーチングスタッフ、そしてフロントと、それぞれが別の方向を向いているような印象が否めなかった。
そんな中、ガットゥーゾはハードワークを説くことでチームをひとつにした。
選手側に立って意思表示しようとするあまり、フロントとの不和を作ったとも噂された主将のインシーニェには、「ピッチのことだけに集中しろ」と声をかけたという。
そのインシーニェは今、他の誰よりも身を粉にして働く。もともと守備意識の高さには定評があったが、ピンチの際はサイドバックのところまで戻って味方をサポート。そして攻撃では軽い判断をせず、正確なプレーでチャンスを作り続けた。