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ガットゥーゾ直伝の献身性が開花。
ナポリがユーベを破りコッパ優勝。
posted2020/06/23 11:40
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph by
Getty Images
6月17日、コッパ・イタリア決勝。ユベントスのGKジャンルイジ・ブッフォンの守るゴールマウスにアルカディウシュ・ミリクが豪快にPKを蹴り込む。その様子をテレビで見届けていたナポリの人々は、街中に殺到した。
通りはあっという間にスクーターで埋め尽くされ、広場という広場には人が溢れ、海岸沿いでも飲めや歌えやの大騒ぎ。ローマから高速鉄道をチャーターして戻ってくるチームの帰還を待ち、ナポリ中央駅前にはファンが大集合。大声でチャントを歌い、フラッグがはためく。すべて真夜中のことだ。
地元紙の報道によると、ナポリの街に夜通し出回っていた人間はおよそ5000人だったという。
試合が行われたのは、新型コロナウイルス感染症で全世界が大混乱に陥っている最中である。2カ月以上に渡ったロックダウンが解かれ、漸次的に産業も動き出してはいるが、マスクの着用義務や集合禁止を破った者は法令により罰金が処される。世界保健機関(WHO)のラファエレ・グエッラ副事務局長は「ファンは卑劣だ」とまで厳しく非難した。
新規感染者ゼロの中で大騒ぎ。
もっともナポリにとって6年ぶりのタイトル獲得、しかも決勝で宿敵ユーベを破っての優勝ともなれば、熱狂的ファンに黙っていろとは無理な注文だったかもしれない。なお、ナポリ及びカンパーニャ州は感染症対策が成功したと見られており、6月に入ってからは新規感染者ゼロの日を多く記録している。
さて、ローマを出発して高速鉄道で戻ってきたナポリの一行だが、中央駅前があまりに混雑しているという一報を受け、市内から10kmほど離れた高速鉄道専用のナポリ・アフラゴーラ駅で降りることになった。
ところがサポーターはこれを聞き付け、やっぱり集合する。そして警備陣の向こう側で発煙筒を焚いて待っていた彼らの前にチームが現れた。
コッパ・イタリアの優勝カップを持って出てきたのはジェンナーロ・ガットゥーゾ監督だ。カルロ・アンチェロッティ監督の後任として昨年12月に就任し、バラバラだったチームを立て直した指揮官である。