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ガットゥーゾ直伝の献身性が開花。
ナポリがユーベを破りコッパ優勝。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/06/23 11:40
コッパ・イタリア優勝でナポリの選手たちに胴上げされるガッドゥーゾ。やはり熱血男には熱いチームカラーが似合う。
自らを称える歌を制し、チームの歌を。
「リーノ、リーノ」
サポーターはその愛称を叫び、「ガットゥーゾはオレたちの1人」と歌い上げる。しかし彼はそれを制し、チームに対して歌われるチャントに切り替えさせた。
現役時代は激しい守備で“闘犬”と呼ばれ、華やかなスターの陰でチームのために泥臭いプレーを厭わなかった元イタリア代表MFは、自身が称えられるよりも選手やスタッフに称賛が贈られることを望んだ。
リーグ戦の再開を受け、その試金石という意味合いも含めて短期決戦となったコッパ・イタリアの準決勝・第2レグと決勝。その中でインテルを、さらにはユベントスを下して優勝を達成したナポリは、ガットゥーゾ監督が望んだチームの一体感を戦術、技術の中に体現して闘っていた。
まずは、6月13日のインテル戦。2月にアウェーの第1レグで1-0の勝利をもぎ取り、優位な状況からのスタートだったが、開始早々にGKダビド・オスピナのミスから失点し、アドバンテージを帳消しにされてしまう。
しかし彼らは、そこからが落ち着いていた。インテルにボールポゼッションは譲るも、ゴール前のスペースは絶対に明け渡さない。誰一人として守備をサボらず、泥臭く味方のカバーに走って相手から攻撃の精度を奪い続けたのだ。
そんな姿勢こそが、ガットゥーゾが監督になってからのナポリの美点である。
中盤の底を重要視し、重点的に補強。
アンチェロッティからチームを引き継いだ際「ディフェンスラインとボールのつなぎに問題がある」と看破した指揮官は、組織守備の強化に努めた。
前線に攻撃のタレントを多めに割いた4-4-2から4-3-3へシステム変更。守備の際には両ウイングが下がって4-1-4-1となり、守備を強固にした。その際に重要なのは、ボール奪取と攻撃の組み立ての第一歩を担える中盤の底だ。
この地味な役割を務められる選手が不在だったため、1月の移籍市場では重点的に補強。インテル戦ではディエゴ・デンメが体を張り、センターバック2人とともに中央で相手の攻撃を防ぎまくった。