球体とリズムBACK NUMBER
クロップ「攻撃が物足りなかった」
リバプールと南野拓実に勘は戻るか。
posted2020/06/22 19:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
マッチフィットネス──日本語に訳すと“試合勘”が最適か。厳密には意味が異なる気もするけれど、いずれにせよこの言葉が、今季二度目のマージーサイドダービーのキーワードだった気がする。
現地時間17日、新型コロナウイルスの影響で中断されていたプレミアリーグがついに再開され、21日夜には首位リバプールがピッチに戻ってきた。多くのファンが待望していた仕切り直しの一戦は、同じくマージーサイドに本拠を置くエバートンとのダービーとなった。
前回の対戦では、リバプールが本拠地アンフィールドで5-2の快勝を収め、エバートンはマルコ・シウバ前監督を解任。彼らはそこから3つのリーグ戦を暫定監督のダンカン・ファーガソンのもとで乗り切り、クリスマスの直前にカルロ・アンチェロッティ新監督を迎えた。
このイタリア人指揮官が就任した当初は白星が先行していたものの、中断前の3試合はアーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシーに一度も勝てなかった。エバートンにとっても、今回のダービーの持つ意味は大きかった。
中断前、スランプに陥ったリバプール。
一方のリバプールはここまでのリーグ戦で27勝1分1敗。勝ち点は82で、後続のマンチェスター・シティに25ポイント差をつけており、あと2試合に勝利すれば、30年ぶりのリーグ優勝を遂げることになる。つまり3月の時点で、記念すべき戴冠に王手をかけていたわけだが、中断される直前はスランプと評すべき状態にあった。
チャンピオンズリーグのラウンド16では、アトレティコ・マドリーに連敗して欧州連覇の夢が潰え、その間にはワトフォードに0-3で完敗し、今季リーグ戦で唯一の敗北を喫していた。さらにFAカップ5回戦ではチェルシーに0-2と敗れ、シーズンに残されたタイトルはプレミアリーグだけになった。
中断前の全公式戦6試合の戦績は2勝4敗。あんなに強固だった守備陣が四度も複数失点を喫し、あれだけ面白いようにゴールを重ねていた攻撃陣が三度も無得点に終わっていた。
リバプールもまた、中断期間をポジティブな転換期──少なくともフットボール的な観点からいえば──と捉えているはずだった。