プロ野球亭日乗BACK NUMBER
松井秀喜の“ノルマ”を果たせるか。
巨人・岡本和真、今季目指すは34本。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/06/19 21:10
一昨年は33本、昨年31本と2年連続30本塁打を記録した岡本。今季、真の長距離打者と認められる数字をクリアできるか。
「あそこを直せば飛躍的にホームラン数は増えるはず」
「あそこを直せば飛躍的にホームラン数は増えるはず。でも、いまのままじゃダメだよね」
松井さんが問題にしたのは構えからテークバックに入るグリップの引き方だった。
当時の岡本は肩を回そうとグリップを極端に右後方へ引いてテークバックをとっていたので、トップの位置で投手方向から背番号「25」が丸々全部見えていた。
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内側にバットを引き過ぎると、反動で逆に開きが早くなりバットが外から入ってくる。そうなるとカット気味の捉え方になって逆方向への打球がなかなか伸びていかない。
肩を入れ過ぎずにグリップをキャッチャー方向にスッと真っ直ぐ引く。そこを直せばインサイドからヘッドが出て、逆方向への打球がもっと強くなるはずだ、というのが松井さんの教えだった。
背番号「25」の見える部分が少しずつ──。
岡本が本塁打を量産し始めたきっかけはその年の9月にナゴヤドームでバックスクリーン右に放ったホームランだったという。
「あの広い球場でもあそこにホームランが打てるんだ」
そう実感してセンター中心の打撃に確信を持てたことが、その後のブレークへと繋がっていった。そしてその頃からテレビのセンターカメラの映像を観ると、背番号「25」の見える部分が少しずつ少なくなるようになってきていた。
右方向にコンスタントに本塁打が出ていることが、岡本が大砲として本格化した証しなのである。
「逆方向に量産できるようになればホームランを40本打てる」――ヤンキースの松井さんが描き、叶わなかった本当のホームランバッターへの夢だ。
ただ、この夢に今年は1つだけ但し書きを付け加えておかなければならない。
新型コロナウイルスの影響で今季の試合数は、通常の143試合から120試合へ23試合削減されるからだ。通常シーズンの40本塁打をこの試合数で換算すると33.56本、すなわち34本が大台ペースということになるはずだ。
この「34」という数字に向けて岡本がチャレンジする2020年シーズンが始まった。開幕の阪神戦の4度の打席は二飛、四球、いい当たりの三塁ライナー、敬遠四球と快音は出なかったが……静かに戦いの火ぶたは切って落とされた。