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一軍初勝利、楽天新監督の素顔とは?
あの名将の真髄を継ぐ知将・三木肇。
posted2020/06/19 21:20
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kyodo News
今年の楽天はシーズン開幕へ向け、地盤固めを徹底した。
春季キャンプから、対外試合に入るまで紅白戦などの実戦を行わなかった。コロナ禍による活動休止から練習を再開した5月8日以降も、6月2日の練習試合が始まるまで、走塁や守備の細かなプレーやサインプレーなどの確認作業に時間を費やした。
それは、新監督の三木肇が望んだことだった。
本来ならば、実戦感覚を養うだろうと思われる時期であっても、焦らず、準備を進める。その狙いについて、春季キャンプの時点で三木はこう説明していた。
「焦ってもしょうがないというか、その時にできることに力を尽くしていくって感じかな。僕個人としても『行き当たりばったりでやりたくない』という考えもあるし、やろうと決めたことを継続してやっていくことで、新しい発見とか、チャレンジへのヒントも見つかってくると思うから」
この信条は、三木が現役の晩年に得た教訓であった。
現役時代の通算安打はわずか59本。
1996年にドラフト1位でヤクルトに入団。守備、走塁のスペシャリストとして重宝されたがレギュラーに定着することはなく、日本ハムに移籍した2008年に現役を引退した。13年間のプロ生活で一軍出場は359試合。通算安打はわずか59本だった。
入団当時の監督だった野村克也から受けた薫陶など、現役時代に学んだことは多い。それでも三木は、「もっと野球の奥深さを追求できたんじゃないか?」と振り返ることが多いという。
そして現役引退後、指導者としてそれを実践し、立ち位置を確立していった人物なのである。
引退翌年の'09年から日本ハムのコーチとなり、当時若手だった中田翔や中島卓也、西川遥輝らに礎を築かせた。'14年から所属したヤクルトでも、打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプルスリー」を達成した山田哲人を育成したことで評価されている。そのヤクルト時代、内野守備・走塁コーチ兼作戦コーチとして'15年にチームのリーグ優勝に貢献。翌年にはヘッドコーチ兼任として支えた。
楽天の二軍監督となった'19年には、球団初のイースタン・リーグ制覇へと導き、そして、今季から一軍監督として指揮を執ることとなった。