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松井秀喜の“ノルマ”を果たせるか。
巨人・岡本和真、今季目指すは34本。
posted2020/06/19 21:10
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
ゴジラには叶わなかった夢がある。
松井秀喜さんは巨人で最後の年となった2002年にシーズン50本塁打を達成。メジャーも注目の和製大砲として海を渡ったが、ニューヨーク・ヤンキース移籍1年目の2003年の本塁打数は一気に16本まで激減した。
「オレはこっちじゃホームランバッターじゃないよ」
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寂しげな表情でこんなことを呟くのを聞いたこともあったが、それでもどうしても捨てなかったのがボールを遠くへ飛ばすことへの強い思い入れだった。
左手で箸を持って食事をすることも。
そのため'03年オフには「逆方向に強い打球を打てないと本塁打数は増えない」と後ろ足を軸にしてポイントを近くに置く打撃フォームへの改造に着手。
逆方向に長打を打つためには左手の押し込みがポイントになるが、右利きの左打者であるがためにそこに弱さを感じていた。
そこで左手を鍛えるためにウエイトトレーニングでパワーアップする一方、自在に操れるようにと慣れない左手で箸を持って食事をする姿を見たこともある。
そうして2年目の'04年に本塁打は31本とほぼ倍増。ただそのオフに、こんな決意を語っていたのである。
「メジャーで本当の長距離打者と認められるためには、やっぱりホームランが30本台ではダメだよね。40本の大台を超えて、初めてホームランバッターとして認知される。だからやっぱりその大台は超えたい」
それはメジャーに渡っても心に秘めていたホームラン打者としての自負が語らせた目標だったはずである。