令和の野球探訪BACK NUMBER
BCリーグはコロナ禍でどんな準備を?
6月20日開幕「ピンチをチャンスに」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byROUTE INN BCLeague
posted2020/06/18 07:00
開幕までの準備に奔走したBCリーグとその各球団。さまざまな施策に取り組み、地域やスポンサーとの関係性を強化した。
社会性、プロ意識向上の教育。
こうした理想を現実に近づけるため、選手たちへの教育を試合ができない時だからこそ重点的に行い、社会性やプロ意識向上のために多くの時間を割いた。
まずは情勢の理解。新型コロナウイルスの特徴を、出典元を明記した上で調べさせ「行政や市民はどのような対応を取るべきか、その中でプロ野球選手はどう振る舞うべきか」のレポートを提出させた。また読書感想文の提出、SNS利用や取材やファンへの受け答えなどを中心としたメディアトレーニングを専門家の藤生恭子氏に依頼して開催した。
「選手のNPBに行きたい気持ちを否定することはもちろんありません。ただ、それしか思いが無いのであればわざわざ福井でプレーする必要はないし、それだけで多くの方に応援してもらえるわけないよね、という気持ちを伝えることができたと思います」(小松原氏)
「選手の輩出」だけに留まらない。
こうした考えにはリーグの村山代表も大きく頷く。3年前からはリーグコンセプトに「ふるさとの全力プロ野球」を掲げる。
「極端に言うと、毎年20人がNPBに行くけど(お客さんが)毎試合50人しかいないリーグと、NPBに行くのは0人でもスタンドや街が賑わっているリーグ。それだったら我々は後者を目指しているんです。そこに関しては“ブレずにやっていこう”とリーグのスタッフとは話をしています」
だからこそ、リーグとしても選手へのギフティングの仕組み作りや、ファン投票での個人賞設立なども構想しているという。
今回取材したリーグ、各球団関係者からは皆、過去最大かもしれない困難な状況下でも前を向き「ピンチをチャンスに」という思いが滲み出ていた。BCリーグも14年目を迎え、NPBの拠点が無い地域での野球振興やNPBとの連携強化により、その存在価値は「選手の輩出」だけに留まらなくなってきている。
夢を目指す選手たちによって生み出される熱気や活気をこれからも変わらず根幹とし、新たな独立リーグの価値を創造する――。そんな挑戦的な新シーズンが6月20日から幕を開ける。