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中日の躍進は小型&大型の右腕次第!
山本拓実、梅津晃大の2人の物語。
posted2020/06/17 20:00
text by
渋谷真Makoto Shibutani
photograph by
Kyodo News
山本拓実が身長167センチ、梅津晃大が187センチ。与田ドラゴンズの最注目は、開幕ローテーションに食い込んだ小型&大型右腕コンビだ。
山本は高卒3年目。兵庫県の市立西宮高校からドラフト6位で指名された。同校は高校野球ファンなら誰でも知っている。夏の甲子園の開会式で、同校の女子たちが全国から集まった代表校のプラカードをもって行進するからだ。つまり、この学校の歴代の女子は何百人も甲子園の土を踏んでいるのだが、この学校そのものの野球部の出場歴はまだない。
そして、山本は同校2人目のプロ野球選手であり、同学年の中でただ一人「センター試験を受けなかった生徒」でもある。
県下有数の進学校。同校のホームページによると、ここ5年の進学実績は東大が5人、京大が34人、大阪大は117人となっている。誇らしげに有名大学の合格者数が並ぶ隅っこに、後から付け足したかのように「就職先」の一覧がある。ここにあるのは1名のみ。ご丁寧に「中日ドラゴンズ1」と社名(?)が書かれていた。
「友達のおかん」にとっても「自慢の息子」。
文武両道の同校にあって、山本の名は県下では知られていた。
その評価が一気に高まり、ドラフト指名リストに入ったきっかけが、3年生の6月に組まれた大阪桐蔭との練習試合だった。1学年下に根尾昂、藤原恭大らがいる選抜優勝校を相手に、7回を3安打に封じ込めた。
この好投を機に、山本は進路をプロ一本に絞る。
周囲は「甘い世界じゃない。大学で実績を積んでからでも」と諭したが、プロ志望届を出し、甘くない世界に身を投じた。
1年目に初登板したのも、2年目に初勝利を飾ったのも、たまたま地元に近い甲子園。泣きながら「YAMAMOTO」と書かれたタオルを振り、声援を送るご婦人の姿がテレビカメラに抜かれた。カメラマンのみならず、映像を見たすべての人が母親だと思っていたが、実は野球部の仲間の母親と発覚したのは後のこと……。
勉強ができ、野球がうまく、朗らかで童顔の山本。「友達のおかん」にとっても「自慢の息子」なのである。