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メッシvs.久保建英で見えた共通点。
「ボールを蹴る喜び」は普遍の才能。 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2020/06/17 11:50

メッシvs.久保建英で見えた共通点。「ボールを蹴る喜び」は普遍の才能。<Number Web> photograph by Getty Images

リーガ再開初戦、メッシ相手に臆さずボールを奪いに行く久保建英。そんなハートの強さを見せられると、期待値は否が応でも高まる。

リーガ前人未到の12年連続20得点。

 右足の内転筋を痛め、再開初戦の欠場も噂されたメッシだが、結局5人交代が可能ななかでフル出場。怪我の影響など微塵も感じさせないハイパフォーマンスで、申し分のないリスタートを切っている。

 マジョルカ戦のゴールで、ラ・リーガでは前人未到の12年連続20得点を達成。かくも長きにわたってトップランナーであり続けられる理由はどこにあるのだろう。

 バルサの一員として「30」を超える数のトロフィーを掲げ、個人としても歴代最多の6度のバロンドールに輝いた。望みうるほぼすべての勲章を手にしてもなお、高いモチベーションを保ち続けられるのはなぜなのか。

 煩悩の塊のような人間には、とてもではないが答えは見つからない。

「役者殺すにゃ刃物はいらぬ。ものの三度も褒めりゃよい」

 劇作家の故・菊田一夫さんが遺したのは、将来を嘱望されながら、ちやほやと持ち上げられて精進を怠り、道を踏み外した逸材の多さを嘆いた言葉だが、それは役者に限らず、スポーツの世界にも当てはまる。

 三度どころか数えきれないほどの賛辞を浴びながら自分を見失わず、満足することも驕ることもなく摂生に努め、30歳を過ぎてもトップレベルをキープするメッシは、そう考えれば長いサッカーの歴史の中でも異例中の異例の存在と言っていい。

 ディエゴ・マラドーナ、ポール・ガスコイン、ロナウジーニョ……。晩年に身持ちを崩した過去のスタープレーヤーとは、明らかに一線を画す。

「ウイズコロナ」に適応する才能。

 そんなメッシは、コロナ禍後のサッカー界についてこんな風に話していた。

「生活スタイルと同様、サッカーもこれまでと同じような形で進むことはないだろう。新たな常識に適応していく必要がある」

 いわゆる「ウイズコロナ」の時代においては、サッカーも否応なく変容を余儀なくされる。それは間違いない。ただ、空っぽのソン・モイスでメッシが伝えてくれたのは、時代を超越してサッカーが我々に与えてくれる、普遍的な喜びであった。

【次ページ】 髭を剃り落とし、湧き出る若々しさ。

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