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本田圭佑、SNSとメディアを語る。
「アスリートの言葉に良い意味で洗脳を」
posted2020/06/08 08:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
HONDA ESTILO Co., Ltd.
かねてから既存メディアを全面的には信用しない彼が、そこで実現したいものは何なのか。今後我々とは共存できるのか――。
雑誌『Number』1004号に掲載された独占インタビュー記事を、NumberWebへ特別転載する。
――現在、新型コロナ・ウィルスの感染拡大によって世界中で人と人が分断されています。誰かの顔を見ること、声を聞くこと、人間が求めるものは何でしょうか。
「多くの人が求めるのは目に見えるものでしょう。人間が持つ感覚の中で目は一番多く使われますし、ビジネスの話で言えば、動画など視覚へのサービスが一番大きいというのも頷けます。ただ、ぼくはほとんど動画を見ないんです。YouTubeもインスタグラムも、ティックトックも開きません。無料の動画は、人の脳が快楽を覚えるものを提供するようプログラムされているので、やるべきことを後回しにして何となくダラダラと見続けてしまう。そうした負のループに陥りたくないんです」
――では本田選手は何を使って人と繋がり、情報を得ているのでしょうか。
「よく使うのはKindleで自分が好きなワードで検索をかけて、出てきた本のレビューを見る方法です。自分の深いところにある関心を共有している人というのはぼくと思考が似ていて、なぜ? という好奇心を持ってる人が多いんです。その人たちのレビューコメントはぼくにとって良質な情報です。だから本の購入に関して予算的な制限は設けていないんです。その代わり他のことにはあまり使わないので。毎日、牛丼でも美味しいなあと思えます(笑)。
それとツイッターは毎日開きます。SNSの中では一番好きです。他のものに比べると相対的に情報の質は高いと感じますし、唯一、スタッフの手を借りずに自分が直接手がけている発信手段ですから」
子供の頃からこういう立場になりたかった。
――本田選手は強い発信力があり、ツイッター上でも大きな影響力があります。一方で匿名アカウントからの批判もあると思いますが。
「大事なのは自分の考えてることを率直に発信し続けることだと思っているので、反対意見が出てもそれはそうだろうなという程度です。全員に納得してもらうことはできないのを前提に発信していますから。またプライベートなことくらい放っておいてほしいという著名人の方もいますけど、 ぼくは子供の頃からずっとこういう立場になりたかった人間なので気になりません。
ただ、やはりツイッターにしても140文字で制限されるので伝えきれないことがあるのも事実です。テキストのメリット、デメリットもあります。そこで、これまで自分がSNSを使ってきた経験をもとに良いところ悪いところを考え合わせた結果、声を直接届ける、『NowVoice』というサービスにたどり着きました」