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本田圭佑、SNSとメディアを語る。
「アスリートの言葉に良い意味で洗脳を」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byHONDA ESTILO Co., Ltd.
posted2020/06/08 08:00
子供を安全圏から引っ張り出すために。
――新サービス、第1回のテーマは「日本の子供たちへ」でした。
「子供たちにはNowVoiceを社会に触れるきっかけにしてもらいたいです。ぼくらが子供のときはどこにでも行けたし、車に轢かれそうになったり、実際に轢かれてよく死ななかったなということもありました。喧嘩もしたし、近所の人にも怒られました。でも、今は物騒な世の中でどこにでも好きには行けない。自分の子供にも『お前らどこでも好きなとこ出かけたらええやん』と思いますけど、やはり小さすぎる、危ないということになる。自分の子供しか叱ったらいけないような社会ですし、喧嘩は危ないからと止められる。今の子は大怪我しないんです。大人になるまで社会を経験させてもらえない時代です。危ないことですよ。大人になって失敗したらもう刑務所ですから。だから子供たちには失敗や苦労をして成功をつかんだトップランナーの言葉を聞いて社会に触れるきっかけにしてもらいたい。それはこのコンテンツの役割の一部だと考えています。ずっと安全圏に引っ込んでいてもつかめるものはないですから」
一部の企業だけが儲けて、あなたの成長は止まっている。
――月額900円の有料コンテンツにしたのも、良質な情報は与えられるのでなく、掴みにいくものだということですか。
「この10年、無料で配信し、無料で視聴できるSNSが世界中に広がりました。ぼくは、この無料で見られるのが当たり前という現状に楔を打ち込みたいと思っているんです。挑戦です。冒頭でも話しましたが、本能が快楽を求めるまま無料の動画を見て、その2時間であなたは何を学べるか、何も学べないよと。一部の企業だけが儲けて、あなたの成長は止まっているということです。それで成長しない人が何を求めるのかと言えば国に対してのベーシックインカムで、最悪の場合、今回のように何かがあったら、『困ります、政府助けてください』『政治家ふざけるな』となる。このスパイラルに陥っていっていいんですか、と言いたいです。動画を運営する側にすれば、あなたの成長なんて関係なく、とにかく長くそこにいてもらうことが目的なんです。もちろん良いコンテンツはあります。全否定しているわけではないんです。でも、すごく低レベルのコンテンツが多いのも事実です。
ぼくらはそれとは全く逆の発想を持っています。お金を何に何のために使っていくのか考えてもらいたい。このままではGAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)にいつまでも稼がせ続けることになる。そういうことを考えてもらいたいです」