大山加奈のVolleyball is Life BACK NUMBER
大山加奈が子どもたちに伝えたい事。
未来を見据えた、新しい仕組みを。
text by
大山加奈Kana Oyama
photograph byRIGHTS.
posted2020/05/20 11:40
子どもたちにバレーボールの楽しさを伝える大山氏。先日はオンラインレッスンを実施した。
地域ベースのリーグ戦、複数チーム。
では具体的にどんな策があるか。
極論を言えば、今のようにトーナメント形式で行われる全国大会の方式ではなく、地域をベースにしたリーグ戦など、より多くの子どもたちが試合に出られる新たな大会方式を取り入れる、というのも1つの方法です。
勝つことが優先されると、どうしてもメンバーが固定されがちです。せっかく「楽しそうだな」と思ってバレーボールを始めても、試合に出る機会がなければ楽しさは実感できません。ならば1つのクラブから1チームと限るのでなく、A、B、Cなど複数のチームが出場すれば、全員が試合に出ることもできます。
加えて、ただ方式を変えるというだけでなく、指導者や保護者の意識も変えることが必要です。せっかく試合に出ても、負けたら怒られる、ミスをしたら怒られる、と思わせるようでは、子どもたちが感じるのは、楽しさよりも恐怖です。それでは将来につながるはずがありません。
変わらなければいけないのは大人。
とはいえ、子どもの頃の私がそうだったように、全国大会で勝つことを目標にしてきた子どもが、突然「楽しめ」と言われても、受け入れられるかと言えばそう簡単でもありません。特に今、目指してきた大会がなくなってしまった子どもたちは、まさにそんな心境であるはずです。
ただ、これだけは言いたい。多くのアスリートや子どもたち、バレーボールに関わる人たちに「あなたがバレーボールをやっていてよかった、と思うことは何ですか」と聞くと、ほとんどが「仲間ができた」「心が強くなった」と答えます。そこで「日本一になったこと」と答える人は、ごくわずかです。
何のためにバレーボールをしているのか。それは「勝つため」だけでしょうか。
バレーボールでしか得られないことはもっとたくさんあるはずです。コミュニケーション能力や、組織の中、それぞれの役割がある中で力を発揮すること。それはすべて、子どもたちの将来にもつながるものであるはずです。
試合がなくなり、うちひしがれている子どもたちに今、そう伝えてもなかなか伝わりません。だからこそ動き、変わらなければならないのは私たち大人です。