バレーボールPRESSBACK NUMBER
総体中止は高校バレーにも衝撃。
コロナ収束後の未来を描く必要性。
posted2020/05/15 07:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
電話越しに聞こえる声から、落胆が伝わる。
春高王者として出場権を得た5月の黒鷲旗全日本選抜バレーボール大会が中止になった時もショックを受けたが、インターハイの中止は遥かにそれを上回る。そう言うのは、京都の東山高男子バレーボール部の豊田充浩監督だ。
「正直、拍子抜けというかね。さぁこれから、と羽を広げる準備をしたところで、ひとつひとつ、羽をむしり取られているような感じですね。命がかかっていることだから仕方がない。それは理解しています。それでも、チャンスは限られているとわかっているからこそ、春高があるからいい、とは思えない。まだ100%、割り切れていないんです。無念、としか言いようがありません」
強化指定部である男子バレーボール部は、3月中は時間を区切り、規模を縮小しながらも練習することはできた。だが4月7日の緊急事態宣言発令に伴い、学校も完全休校。それからは選手と顔を合わせることもなく、コミュニケーションの手段はLINEのみ。
「(インターハイ中止は)残念ですが春高で挽回できるよう頑張ります、と。生徒は、それしか言えないですよね」
進路にも影響するインターハイ中止。
4月26日、史上初のインターハイ中止が決定した。
バレーボールは1月に全日本バレーボール高等学校選手権大会、通称“春高”が開催される。
「本番は春高」と切り替えることもできるが、インターハイでこそ為し得ることもある。
たとえば、前述の東山は昨夏のインターハイは準決勝で松本国際(長野)に敗れた。その敗戦から出た課題を徹底的に分析し、掲げたのはスピードの強化や組織的なブロックの打破。常に松本国際を明確なターゲットにイメージしながら強化に励んだ結果、春高でリベンジを達成し、初の頂点に立った。
さらに言えば、1年というスパンで見れば夏から冬へ、チームの成長につながるという点だけに留まらず、選手の進路にもインターハイや各地域のブロック大会の成績は大きな影響を及ぼす。特に連続出場を果たす強豪校の2年生や全国大会に出場が叶わなかったチームの3年生にとっては、大学・企業関係者の目に留まる機会になるため、インターハイでの成績によって、進学先の選択肢が増える。加えて、インターハイ出場が新たな入部希望者を増やすことにもつながり、翌年さらにその翌年と、チーム強化の幅も広がっていく。