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「秒」で15mの壁を駆け登れ!
日本にスピード種目の新時代が来る。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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photograph byAFLO

posted2020/06/02 11:00

「秒」で15mの壁を駆け登れ!日本にスピード種目の新時代が来る。<Number Web> photograph by AFLO

同じ熱量で取り組むライバルを熱望。

 竹田にはもうひとつ求めているものがある。それは自身と同じ熱量でスピードに取り組む選手だ。

 スピードは世界選手権の第1回大会から実施され、W杯では1998年から種目になったが、競技としての歴史はスポーツクライミング種目のなかでもっとも古い。リードの源流は1985年にイタリアの岩場で行われた『SportRoccia』にあるが、スピードの源流は1940年代から1980年代前半に旧ソ連で行われた岩場を駆け登る大会。1976年には初めて国際大会が開かれ、日本からは今野和義氏、大宮求氏が参加している。

 しかし、このときは国内で普及することはなく、リードやボルダリングの後塵を拝してきた。こうした背景もあって国内ではコンバインド種目の一環としてスピードに取り組む選手はいても、スピードにフォーカスしてトレーニングする選手は限られた。

 それだけにアスリート・パスウェイでスピードに特化した選手たちの育成が始まったことを竹田は歓迎している。

「競技として本気でスピードに取り組む選手が増えれば、ボクの気持ちも上がりますから。刺激しあい、切磋琢磨しながら、世界のトップレベルに追いつきたいです」

 15mの壁を瞬く間に駆け登っていくスピードは、スポーツクライミングの3種目のなかで、もっともわかりやすいルールだ。ゴールパッドを先に叩いた選手が勝利。シンプルな勝負だけに、初めてスピードを観た人たちをも一瞬で魅了して大会は大いに盛り上がる。

 2024年パリ五輪では単種目での実施が有力なスピードは、国内では新たなフェーズを迎えている。竹田創をはじめ、日本記録保持者の楢﨑智亜、そして発掘事業の新たなタレントたちによって、これからの4年間で国内のスピードは、新時代が築かれていくことになる。

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