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「秒」で15mの壁を駆け登れ!
日本にスピード種目の新時代が来る。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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photograph byAFLO

posted2020/06/02 11:00

「秒」で15mの壁を駆け登れ!日本にスピード種目の新時代が来る。<Number Web> photograph by AFLO

競技未経験の才能発掘トライアウト。

 現在のスピードの世界記録は、男子がレザー・アリプアシェナ(イラン)が2017年にマークした5秒48。女子は昨年10月にエリーズ・スーザンティ・ラハユ(インドネシア)が6秒99を記録して女子選手で初めて7秒の壁を破った。

 世界選手権やW杯で予選上位16名が進む決勝トーナメントを勝ち上がるには、男子なら5秒台、女子なら7秒台をコンスタントに出すことが求められる。日本代表はまだ男女ともこのレベルには達していない。

 この現状を打破するために、JMSCA(日本山岳・スポーツクイミング協会)は、昨年からJSC(日本スポーツ振興センター)のタレント発掘事業『アスリート・パスウェイ』を利用したタレントの発掘を始めている。スポーツクライミングは未経験でも、スピードで五輪や世界選手権の『未来の日本代表』になりうる潜在能力の高い子どもを発掘・育成していくもので、昨年11月に愛媛県で『タレント選出トライアウト』を行った。

 日本代表の強化を担う安井博志ヘッドコーチは、「陸上で全中(全国中学校体育大会)に出場するレベルの選手もいて、将来が楽しみな才能にたくさん出会えました」と手応えを口にする。

ホープとして期待される竹田創。

 トライアウトで選出された子どもたちは、ユース日本代表コーチの指導を月に1度ほど受け、国内合宿や大会に出場しながら将来の日本代表を目指していくことになる。

 そうした状況のなか安井ヘッドコーチが、「それでも一番期待しているのは」として国内クライミング界のホープの名を挙げる。

 それが竹田創(はじめ)だ。宮城県塩竈市に暮らす仙台城南高3年は、子どもの頃からクライミングを始め、ユース大会では知られた存在だったが、昨年5月の国内外の有力選手を集めたスピードイベントで2位になって一躍パリ五輪の期待の星に躍り出た。

【次ページ】 楢﨑智亜と対決するなど急成長。

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