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「秒」で15mの壁を駆け登れ!
日本にスピード種目の新時代が来る。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2020/06/02 11:00
楢﨑智亜と対決するなど急成長。
昨年は3月から5月にかけては世界ユース選手権のユース日本代表入りに向けて、スピードの練習に特化。平日はフィジカル強化、週末は仙台から東京や岩手にスピードの練習に通ったことが、5月のジャイアントキリングにつながった。
スピードでの竹田の動きは、スタートから3手目まではどちらかといえば重たさを感じさせる印象。しかし、馬力の大きなエンジンがトルクを得ると一気に推進力を得るかのように、竹田は4手目からは力強く加速度を増してゴールまで駆け上る。今年の『スピードジャパンカップ』は準決勝で楢﨑智亜と対決し、勝負所で足をスリップさせてフォールして3位。日本最速の称号は逃したものの、随所で竹田らしいパフォーマンスを披露した。
近場にスピード壁がない葛藤。
竹田の自己ベストは昨年の世界ユース選手権でマークした6秒44。今シーズンは国際大会への派遣基準タイム6秒20のクリアや、楢﨑智亜の日本記録6秒15超えなど、さらなる進化を期待されていたが、コロナ禍で停滞を余儀なくされている。緊急事態宣言下に竹田と連絡を取ると、「毎日ダラダラしています」と笑いながら返ってきた。
「3日に1日程度で家にあるトレーニングボードで2時間くらい登ったり、筋トレをやったり、走ったりしています。それ以外はゲームばっかりです(笑)。今シーズンは6秒20より速いタイムを目指していたので、やっぱり残念です。一日も早く収束してトレーニングできる日が戻ってくれることを願っています」
竹田がスピードさらなる成長のために欲しているのがトレーニング環境の充実だ。ボルダリングやリードは宮城県内のクライミングジムでできるが、国際規格のスピード壁は宮城県内にはない。そのため東京や岩手に通いながらスピードの競技力を高めてきたが、「やっぱり身近にないとできないことがある」と嘆く。
「もっと速くなるには、体の動かし方を繰り返し練習して染み込ませること。ホールドに乗せる足の置き方の角度が微妙に変わるだけでタイムは大きく変わってしまうんです。細かな部分を突き詰めて行くためにも、やっぱり身近な場所にスピード壁はほしいですね」