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「秒」で15mの壁を駆け登れ!
日本にスピード種目の新時代が来る。
posted2020/06/02 11:00
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph by
AFLO
スポーツクライミングが東京五輪の追加種目に決まってから、ボルダリング、リード、スピードの各種目で日本代表の競技力は目覚ましい進歩を遂げてきた。
それまで野口啓代が国際舞台で孤軍奮闘するような状況だったボルダリングは、2016年と2019年にW杯年間王者と世界選手権優勝二冠を達成した楢﨑智亜や、2019年にW杯年間女王に輝いた野中生萌などが台頭。いまでは多くの日本選手が国際大会の表彰台で笑顔を咲かせている。
リードは2012年から2年連続でW杯年間王者になった安間佐千が競技を退くと、世界の頂点は遠ざかった。だが、2017年に国内第一人者の是永敬一郎が悲願のW杯初優勝を果たすと、次々と国内のスペシャリストたちが国際大会で頭角を現した。
昨シーズンは男子で西田秀聖(現・高3)と清水裕登がW杯リードで初優勝。女子でも国際大会デビュー年だった谷井菜月(現・高2)がW杯リード年間3位。この谷井と同学年の森秋彩もW杯ボルダリングでの3位に続き、W杯リードと世界選手権リードでも3位になる活躍を見せた。
国内初のスピード専用壁誕生で進歩。
スピードは2016年まで国内にスピード専用壁はなく、大会も行われてこなかったが、東京五輪の実施種目が3種目複合のコンバインドに決まり、2017年に国内で初めての国際規格のスピード専用壁が誕生してからは目覚ましい進歩を遂げた。
2017年11月に初めて発表されたスピードの国内最速タイムは、男子1位が楢﨑智亜の7秒37、女子1位が野中生萌の10秒30。そこから足掛け4年で、日本記録は男子が楢﨑智亜の6秒15、女子が野中生萌の8秒40まで短縮され、ほかの選手たちも大幅に記録を伸ばしている。
ただし、これは東京五輪で実施されるコンバインド強化としての成功であって、スペシャリストがしのぎを削る単種目での実力は、まだまだ世界トップレベルは遠いのが実情だ。