野球クロスロードBACK NUMBER
仙台育英・須江監督の徹底的な管理。
高校生投手分業制の最先端を追う。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/05/07 17:00
2018年に仙台育英の指揮官に就任した須江監督は、八戸学院大を卒業後に2006年から系列の秀光中を率いて全国制覇を経験している。
投げる試合に向けて調整できない選手は信頼できない。
外観のみで論じると「管理野球」だろう。だが、須江の話を聞いていると、選手に自主性を促す上で欠かせないプロセスだとわかってくる。その観点からも専門家たちとの連携を深め、選手たちを守っているという。
医師やトレーナー、運動機能の向上をサポートする理学療法士ら外部スタッフと、SNSなどのツールを活用しながら選手たちの情報、状態を共有。それを基に個人と定期的に面談をして、週、月単位で目標を設定し、チームで決められた練習以外のトレーニングをセルフプロデュースさせているのだという。
選手は自分の登板日を知っている。結果も数値化され、課題も浮き彫りとなる。だからこそ、目指すべき道に迷いなく進める。
須江が選手に望むのは、いわば“血の通った自主性”である。
「裏を返せば、自分が投げる試合や改善点がわかっているにもかかわらず、コンディショニングができないような選手を、私は信頼できませんから。現時点での実力を把握して、レベルアップに必要なトレーニングを自分で決めて実行に移すことが大事なんです。人から言われたことしかできない人間は、きっと野球以外でも苦労すると思うので」
選手の自己管理能力を信じ、全体練習は休止。
新型コロナウイルスの影響で、4月12日から野球部は活動を休止している。緊急事態宣言が解除されるまでは全体練習を再開しないというが、須江は「今は底上げの期間ですから」と、選手の自己管理能力を信じる。
今はまだ、夏の大会へ向けてのローテーションを決めてはいない。ただ、6月に入ってから方向性を定め、調整を進める――そういった算段はすでに付いている。
「3年生と2年生に関してはベースがわかっているので、そこまで気にしていません」
綿密に、合理的に。仙台育英が築き上げた投手の陣形は、簡単に崩れそうにない。
リポート、そして第2特集「笑顔の物語」では、上原浩治、松井秀喜、松坂大輔、そして金足農業などの記事がラインナップしています。