野球クロスロードBACK NUMBER
仙台育英・須江監督の徹底的な管理。
高校生投手分業制の最先端を追う。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/05/07 17:00
2018年に仙台育英の指揮官に就任した須江監督は、八戸学院大を卒業後に2006年から系列の秀光中を率いて全国制覇を経験している。
普段から設定している「300球/週」。
「確かにそう思われますよね」
こちらの疑問に同調しつつも、その狙いを解説してくれた。
「この起用は今後2度とないからです。センバツに関して言えば、代表校が決まった段階で決勝まで戦い方を想定していました。優勝できる力を持ったチームは、私の見立てだとおそらく8校から10校。そこを具体的にトーナメントに当てはめながら、『どう戦うか?』とシミュレーションしました。
対戦相手に想定しているチームの得点能力や選手個々の力、公式戦の戦いなどで得たデータと、うちの戦力を照らし合わせた上でのベストな布陣だったのが、回答したローテーションでした」
そもそも、須江にとって「500球/週」の投球制限は十分に許容範囲だった。仙台育英では、普段から投手に「約300球/週」を設定しているからである。
「短期間で多くの球数を投げることが良いとは考えていません」
そこには、投手の「故障防止」といった、一般論の枠を越えた根拠が存在する。
60球を境にパフォーマンスが落ちる?
須江が現在の投手起用に至ったのは、仙台育英の系列校である秀光中の監督を務めていた経験が大きい。
軟式野球部の監督として2006年から指揮を執り、2014年にはチームを全国制覇へと導いた。実績を重ねる過程で、須江の観察眼も年々、研ぎ澄まされていった。そのひとつが、1試合における投手の球質の変化である。
「あくまで私の感覚での話なんですが」と謙遜するが、投手を見続ける上で導き出した法則があるのだという。
それは、およそ60球を境に、徐々に球質が低下し、ボール球も増えてくるというのだ。
7イニング制の中学軟式野球では、能力の高い投手であれば80球から100球で完投できる。しかし、60球からパフォーマンスが落ちると判断するなか、ひとりにマウンドを任せるのはリスクが高い。そう須江は考えたのだ。