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西武・ニールの活躍は嬉しい裏切り。
「開幕投手はスペシャルな役割だが」
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2020/04/27 11:00
日南キャンプで辻監督(右)と握手するニール。昨季は12勝1敗と活躍、今季は開幕投手を務めることが決まっていた。
二軍では自分なりの調整方法で。
ニールが日本球界で結果を残せた理由については、昨年、幾度も各メディアで取り上げられた。二軍調整中に受けた許銘傑(シュウ・ミンチェ)投手コーチによる指導や、自身の確立したトレーニング方法を、再度、見つめ直す時間を持てたことが大きいとニール自身は後に振り返っている。
「プロとして10年間、野球をやっていると、違う意見を持つコーチに指導を受けることもあったし、コーチによって違うコンディショニングの方法を勧められることもありました。そして昨年、日本に来て環境と文化が違う中でプレーすることは大変ではありました。日本の野球にアジャストするまで時間もかかった。ファームに落ちたことが私にとっては一番大きかったですね。日本の野球についてたくさん考える時間があったし、その上で、自分なりの練習方法を実行しようと決意することができました」
ライオンズの投手陣、それも二軍には20代前半の、経験が浅い選手が多かった。
「そもそも私は年齢もチームの中で上のほうです。それなのに日本の若い投手と同じ調整方法をとっても、それは自分のスタイルには合わないと思いました。決して日本の練習方法を否定するわけではありませんが、彼らのように1日中走ったり、1日中投げたりはできない。彼らは若いのでそれが可能だけれど私に合うスタイルではないと思いました」
自分の調整方法を貫きつつ、実戦的な部分で「どうやって日本の野球に順応していくか」と考えられたことが大きいと話す。
アメリカとの違いは「攻め方」。
「アメリカと日本の違いはたくさんあるのですが、一番感じたのはバッターに対する攻め方の違いです。アメリカでの私は初球からストライクをどんどん投げていくタイプのピッチャーでした。でも日本に来てからは、あえてボール球を投げることの大切さも感じています。相手打者のデータや特徴によって、ボール球を投げなければいけないカウント、わざとボール球にしなければいけない戦局もかなりあることを理解しました」
パワーのあるメジャーの打者は大味で、芯を外せば凡打してくれる場面も多いが、日本のバッターはコンパクトに振り、芯に当てるのがうまい。そういった打者の特徴を知ることが、ピッチングでの「考え方」を変えるきっかけとなった。