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世界フィギュア、震災で代替開催。
思い出すスケーターたちの結びつき。
posted2020/04/24 11:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Atsushi Hashimoto
それは、特別な光景だった。
2011年4月24日、ロシア・モスクワでフィギュアスケートの世界選手権が開幕した。
当初、予定されていた日時と場所ではなかった。
このシーズンは3月21日から27日にかけて、東京・代々木競技場第一体育館で開催されることになっていた。
一転したのは3月11日のことだった。東日本大震災により、14日、一度は中止が発表された。
16日、日本スケート連盟の橋本聖子会長(当時)が国際スケート連盟の意向も受け、9月ないしは10月前半に日本で開催する方針を表明した。
ただ、やはり翌シーズン初頭に行うことには、選手の年間スケジュール、会場探しなどさまざまな点で無理があり、4月24日からロシア・モスクワで代替開催することとなった。
「世界中のみんなが心配してくれているんだ」
日本から出場したのは、高橋大輔、織田信成、小塚崇彦。安藤美姫、浅田真央、村上佳菜子。ペアは高橋成美、マーヴィン・トラン。アイスダンスはキャシー・リード、クリス・リードであった。
常とは異なる世界選手権であるのを印象付けたのは、オープニングセレモニーだった。
さまざまな選手の映像が流れ、ファンファーレが場内に響く。
ライトアップされたリンクに、投影された日の丸が浮かび上がる。映像は桜、海、さらに地球や青空に変化する。
再び日の丸が浮かび上がると、様々な民族衣装を着たスケーターたちが囲んだ。
その情景に、小塚は心に浮かんだ思いを、こう言葉にした。
「世界中のみんなが心配してくれているんだ。自分も、被災した方々への気持ちをこめて滑りたい」