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世界フィギュア、震災で代替開催。
思い出すスケーターたちの結びつき。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2020/04/24 11:40
東日本大震災のためロシアでの代替開催となった世界フィギュアで、バンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナらを抑えて優勝した安藤美姫。
「自分に自分で責任を持つ」ことをテーマに。
小塚に限らない。選手それぞれに思いを抱く中、好演技を見せたのは、その小塚だった。
「自分に自分で責任を持つ」ことをテーマに取り組んできたシーズンで、グランプリファイナル3位、全日本選手権初優勝など着実に成長のあとを見せて臨んだ世界選手権。
ショートプログラム6位でフリーを迎えると、フリーでは4回転トウループをクリーンに決めるなどパーフェクトな演技を披露する。
結果、優勝したパトリック・チャンに次ぐ2位、世界選手権で初めて表彰台に上がった。
「4年前より、重たいメダルだと思います」
女子で輝きを見せたのは安藤だった。
ショート2位で発進すると、フリーではコンビネーションジャンプのトリプルトウループが2回転になるなどはしたが、全体に落ち着きがあり、印象的な滑りを見せる。
このシーズン、グランプリシリーズは2大会ともに優勝、全日本選手権優勝、四大陸選手権では初の200点超えを達成。安定の中に着実な進化を見せた1年であったことをあらためて証明するかのようだった。
結果、2007年以来2度目の金メダルを手にした。
「日本の人たちへの思いを抱えて、最初からメダルが欲しいと思って滑りました。4年前より、重たいメダルだと思います」
安藤の存在感をさらに際立たせたのは、エキシビションだった。1曲目に続き、アンコールで披露したのは『レクイエム』。前シーズンのショートとエキシビションで使用していた、幼少期に亡くした父への思いを込めたプログラムだ。
アンコールであるがゆえに1曲目の白の衣装のまま滑った『レクイエム』は、前シーズンの黒をベースとした衣装での滑りとは異なる思いが込められているようだった。それは鎮魂のようだった。