フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
世界フィギュア、震災で代替開催。
思い出すスケーターたちの結びつき。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2020/04/24 11:40
東日本大震災のためロシアでの代替開催となった世界フィギュアで、バンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナらを抑えて優勝した安藤美姫。
「ロシアの人だけじゃなく、みんな、優しかったです」
……エキシビションがフィナーレを迎える。大会は終わろうとしている。
オープニングセレモニーの特別な光景にあったあたたかさは、最後まで続いていた。
フィナーレが始まり、最初にリンクに姿を見せた安藤に続き、高橋と小塚が登場する。日本の3選手の周囲を、ロシアの選手たちが手をつないで囲む。リンクの上には日の丸が浮かび上がっていた。
期間中、顔を合わせれば、海外の選手や関係者から日本の選手や関係者に声がかけられた。
「ロシアの人も、ロシアの人だけじゃなく、みんな、優しかったです」
高橋をはじめ、選手たちはそのあたたかさをかみしめた。
代替開催が決まり、時間がない中で作り上げた、日本への贈り物だった。
「ほんとうに選手みんな、仲いいですよね」
2019-2020シーズンもまた、世界選手権は中止となった。ただ、代替開催はされない。
2011年と今日とでは、状況は大きく異なる。日本に大きな被害が出たあのときと、世界規模の災厄に見舞われた現在とでは。
春のアイスショーも次々に中止、延期となった。世界中の多くのスケーターが練習すらままならなくなっている。
それでも、2011年をふと思い出す。
そして国内外のスケーターたちの、結びつきを思う。他競技の選手からの、「フィギュアスケートって、ほんとうに選手みんな、仲いいですよね」という言葉も思い出す。
2011年は、日本に向けてあたたかなまなざしが贈られた。
今は、選手それぞれにやれることをやりながら、過ごしている。そして互いを思う気持ちは、きっと再びスタートを切るときの力になるだろう。