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車いすフェンシング・加納慎太郎に
松岡修造が「障がいの受容まで」を訊く。 

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松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

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photograph byNanae Suzuki

posted2020/05/04 08:00

車いすフェンシング・加納慎太郎に松岡修造が「障がいの受容まで」を訊く。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

屋内練習場でのランニングで汗を流す加納慎太郎。剣道からフェンシングへ転身の理由は……。

断念した……ボート選手になる夢。

松岡「それは、オレは変わっていないという思いなのか、障がいを認めたくないのか、あるいはどう受け入れたら良いのか自分でもまだよく分からなかったからなのか……」

加納「その3つ全てです。なんでそんなことを言われないといけないんだろうって思いますし、相手のその言葉から、自分をちょっと見くびっているなとか、軽蔑している意図を少なからず感じてしまう。自分はケガをする前と何も変わっていないのに、どうして変わった目で見られるんだろうって」

松岡「それは辛いですね。足を切断して、ボート選手になる夢はどうなったんですか」

加納「一応、連絡はしてみたんです。こういう足の状態ですけど、挑戦できますかって。そうしたら、正座ができないのと、転覆したときにちょっと危ないから無理でしょうと。自分でもその夢はもう諦めるしかないと思っていたので。そこからは自分の目標を見つけるのが目標になりました」

松岡「また新たな道を模索したわけですね。ただ、目標って心が前向きの時の方が見つけやすいじゃないですか。その時の心理状態はどうだったのですか」

加納「かなりやさぐれてました」

「義足になる前よりも自分をパワーアップさせたい」

松岡「やさぐれるって、久しぶりに聞く表現です。落ち込む一方だったんですね」

加納「もちろん落ち込みましたけど、一方で見返してやりたいという気持ちも持っていました。周りからそういう風に見られるんだったら、今度はそれをエネルギーに変えてやろうって。悔しい思いや悲しい思いを燃料にして、いつか自分の目標が定まったら爆発してやろうとは常に思ってましたね」

松岡「本気のターゲットをずっと探していたわけですね。自分の全てをぶつけられる対象物を」

加納「まず思ったのは、義足になる前よりも自分をパワーアップさせたいということだったんです。心技体の、体の部分で欠損して義足になった。そこを補えば体の部分でも過去の自分を超えられるんじゃないかと。それで義足について学ぼうと、義足の学校に入り直すんです」

松岡「フェンシングと全然関係ないですね」

加納「そうですね。僕、ちょっと人生を遠回りしているので(笑)。その時にまた剣道をやり始めたんですけど、やっぱり踏み込みが甘かったり、すり足が上手くできずに負けてしまう。また勝てるようになりたくて、義足を勉強しようと」

松岡「なるほど、自分に合った義足を作ることができれば、また勝てるようになるんじゃないかと」

【次ページ】 「この競技は義足を外すから意味がないじゃないですか」

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