松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
車いすフェンシング・加納慎太郎と
松岡修造の対談に予期せぬ人物が参入!
posted2020/05/03 08:00
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph by
Nanae Suzuki
扉を開けた瞬間、松岡修造さんが驚きの声を上げた。
「すごい! いったい何面あるんですか」
昨年誕生したナショナルトレーニングセンター東館は、パラリンピック競技に配慮されたバリアフリーの練習フロアをいくつも備えている。車いすフェンシングの練習場も広く立派なもので、競技コートに当たるピストは30を数える。真新しい練習場の入口付近に、義足を履いて立つ加納慎太郎さんの姿があった。
加納さんは福岡出身の35歳。現在はヤフーの社員として働きながら、車いすフェンシングで東京パラリンピック出場を目指している。
挨拶を交わした後、2人はさっそくピスト(床)に固定された競技用の車いすに座り、正面から向き合った。車いすに座ったまま、上半身の動きだけで剣を突きあうのが車いすフェンシングの基本ルールだ。
「フェンシングはスポーツであり、アート」
松岡「第一印象を言って良いですか。すごく慎太郎さんを遠く感じます。いすが固定されているから近づけないし、ここからどうすればいいのか……」
加納「まだ剣を持ってませんからね。剣を持てば十分相手に届くし、上半身を引いたり、傾けたりしながら、間合いを詰めます」
松岡「ここは施設が新しいから、雰囲気に圧倒されますね。今日は軽く体験させてもらうだけなので、そんなに本気にならないで下さい(笑)」
加納「わかりました(笑)」
和やかに対談がスタートすると、ここで予期せぬ出会いがあった。
男子フルーレの日本代表コーチを務めるオレグ・マツェイチュク氏が練習場に現れたのだ。ときおり車いすフェンシングの指導もしているそうで、会えたのは偶然だ。松岡さんが挨拶に駆け寄ると、しばし2人の間でこんな会話がやりとりされた。
オレグ「フェンシングはスポーツであり、アート。ミッションは点を取ることだが、華麗さを魅せる競技でもある」
松岡「車いすフェンシングとノーマルフェンシングの違いは何ですか?」
オレグ「車いすフェンシングは足を使わない。それが違いとしては大きい。利用できるスペースが少ないから、より戦術的とも言える。センスが問われます」