“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J中断による、サッカーがない時間。
改めて意義を感じる水戸の取り組み。
posted2020/04/19 11:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
プロサッカー選手からサッカーが奪われた。いや、奪われたという表現はよろしくないか。何れにせよ、プロサッカー選手は今、“仕事”ができない状況に陥っている。
では、彼らは今、何をすべきなのか。いつ訪れるか分からない活動再開に向けて、コンディションキープはもちろん、ボールに触れるなど足元の感覚を維持することは必要だろう。ただ、この時間を使って「サッカー以外のこと」に目を向けることも必要ではないだろうか。
高校年代をメインに取材する筆者は、これまで多くの進路に対する悩みに直面してきた。近年多いのは「プロ生活はサッカーをやっていない時間の方が長い」という声だ。プロである以上、生活の中心をサッカーに置くべきである。しかし、ボールに触れていない時間が長いからこそ、それを有意義に使える、使えないでは、キャリアも大きく変わってくるだろう。
プロフェッショナルとしてどう過ごすべきなのか。セカンドキャリアへのアプローチをどう計画するか。
しかし、その時間をうまく使いこなしている選手はどれほどいるのだろう。何をすればいいかわらかないという若手選手も少なくない。そんな現状をふまえ、大学進学を選択する高校生も増えている。
何のためにサッカーをやり続けるの?
以前、当連載で水戸ホーリーホックの西村卓朗GMのインタビューを行った。そこでは水戸がクラブとして取り組む、選手育成や社会人としての人格形成のプロジェクトを紹介した。その1つが『Make Value Project』(以下、MVP)だ。
一昨年から外部講師を招き、各々の専門分野の講義(70~90分)を行い、そこで得た学びをクラブが採用するキャリアコーチとの面談を重ね、蓄積・言語化させていく。
「今ここにいる人たちは小さい頃からプロサッカー選手を目指してなることができた人ばかり。ただ、『この先は?』と問いかけると、曖昧な部分がある。これまではプロになるためにやってきたけど、実際なったら『この先、何のためにやり続けるの?』と。ここからは自分のスタンス、考え方、こだわりを整理して、じゃあそのこだわりはどこから来ているの? 誰に影響を受けたの? それをどう今後に反映させていくの? という、いくつもの問いかけの答えを見出していく。
そのために 内部だけではなく、外部の人の講演を聞くことで、講演者の日常や価値観、『なぜ今この職業をやっているか』に直に触れることができる。それを受けてじゃあ自分はどうか? こういう視点を持っていたか? と問いかけながら、自分のスタンスを醸成していくことが目的です」