“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER

J中断による、サッカーがない時間。
改めて意義を感じる水戸の取り組み。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph byTakahito Ando

posted2020/04/19 11:30

J中断による、サッカーがない時間。改めて意義を感じる水戸の取り組み。<Number Web> photograph by Takahito Ando

水戸・西村GMが中心となって始まった「Make Value Project」。選手にも変化が現れ始めている。(写真は3月上旬のもの)

講義して感じたプロの「聞く力」。

 参加した選手は15名。スタッフや西村GM、冨田大介CRC、ベテランGK本間幸司も飛び入りで参加をしてくれた。

 講演をしながら感じたのは、どの選手も「話を聞き慣れている」ことだ。「ここが自分にとって重要だ」と感じるところでメモを取り、前のめりの姿勢になる。自分に置き換えて考えこむ選手もいた。これまでも学生などに向けた講演会を行ってきたが、プロサッカー選手たちの「聞く姿勢」のレベルの高さに改めて驚かされた。

 講演後、せっかくの機会だったので、参加選手に感想を逆取材をさせてもらった。自分の伝えたいことがしっかりと伝わったかを確認する意味でも――。すると、終了後すぐにであったにもかかわらず、自分の答えをしっかりと言語化できていたのだ。

「取材する側の人がどういう気持ちで僕らと向き合っていたのか、その熱量が伝わってきた。我々選手も1つ1つの質問にしっかりと向き合い、責任を持って発信していかないといけないと思いました」(FW村田航一)

「ジャーナリストにとって『伝える』ということは、ただ情報を与えるのではなく、読み手の心に伝えるということを聞いて、僕らにも当てはまることだと思いました。サッカー選手として、周りの人たちにとって心の拠り所になる存在にならないといけない。プロとして自分のやるべきことをまた1つ確認できました」(DF細川淳矢)

 前述したようにさまざまな業界に身を置く専門家の話を聞くことで、多様な考え方や刺激を得ることができる。それを蓄えることで、サッカー以外の時間がより充実したものとなるのだ。

何が問題で、どうするべきかわらからない。

 印象的だったのは、水戸在籍2年目で、プロ7年目を迎えたMF森勇人だった。

「水戸に来てから自分の考えを言葉にする力がかなり身についたと思っていますし、今日の講義でそれがまた1つ深まったと思っています」

 名古屋グランパスの下部組織から2014年にトップ昇格し、その後ガンバ大阪で2年間プレーした後、この水戸にやってきた。

「プロ入りしてからずっと『サッカー以外の時間が多い』と感じていて、『この時間を有効活用しないと将来に響くんじゃないか』と漠然とした不安と疑問を抱えていました。

 引退後の自分を考えた時に、指導者になりたいと思っていたので、G大阪時代から自分がこなしたトレーニングメニューや監督、コーチが話していたことをメモしていましたし、英語のマンツーマンレッスンに通うなど、自分なりにアプローチしてきた。でも、現在地と明確な目標が曖昧で、ただこなしているだけのように感じていたんです」

【次ページ】 「水戸1年目は一番充実していた」

BACK 1 2 3 4 NEXT
水戸ホーリーホック
森勇人
山田康太
西村卓朗

Jリーグの前後の記事

ページトップ