“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J中断による、サッカーがない時間。
改めて意義を感じる水戸の取り組み。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/04/19 11:30
水戸・西村GMが中心となって始まった「Make Value Project」。選手にも変化が現れ始めている。(写真は3月上旬のもの)
専門家、経営者、医療関係者まで。
これまで招いた講師は多種多様だ。
社会基礎力(経済産業省が2006年に提唱した「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力と12の能力要素から構成された「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」)を指導する山内貴雄氏、元楽天執行役員の小林司氏、元浦和レッズの鈴木啓太氏。さらには医療関係者、地元企業の関係者、クラブの代表取締役社長である沼田邦郎氏、取締役の小島耕氏など、錚々たる顔ぶれだ。
そんな中で、取材をきっかけに西村GMから講師のオファーをいただいた。
取材時のアプローチを西村GMに逆に質問されたことを契機に、「それを選手たちの前で話してください」というものだった。さらに「遠慮せずに『こういう選手は伸びない』とか、きついことをどんどん喋ってください。彼らに本音を本気でぶつけることで身になりますから」と熱意を込めた言葉までいただいた。
自分なんかがプロサッカー選手の講師になっていいのか悩みはしたが、登壇することで、いつもは質問する側が質問される側に周る。これまでと違った視点での発見があるのでは、と思い恐縮ながら引き受けることにした。
伝えたことは、取材者の意図と駆け引き。
MVP講師当日、議題にしたのは我々取材陣が対象者(選手)をどのような目線で見ているかということ。選手たちは日々、無数の取材・インタビューを受けるが、そこには1つ1つ意図があって、駆け引きがある。取材者は細かい選手の所作まで目を配ってネタを見つけるわけだが、その視点を包み隠さずに選手に伝えることで、コミュニケーションの重要性や意義を説くことにした。
私が考えるに、プロサッカー選手はいかに「自分」を理解できるかに尽きると思っている。言い換えれば、「自分のGPS」を持っているか。自分の現在地を常に把握していれば、自ずと目標までの道のりは明確となり、スムーズに進んでいるのか、渋滞しているか、またこっちの道の方が早い、進みやすい、と具体的なアプローチを練ることができる。どんなリスクがあるのかを把握していれば、それに対する準備もできるだろう。
それは、インタビューをするときも同じだ。選手の本音を引き出すという目的に向かって、どういうルートを辿ればいいかを考える。聞きたいことがあるとき、それをストレートに聞くべきか、それとも別の話から始めるのか。対象者の目が見開いた瞬間を見逃さない。
また、私がコラムや本を作る時に大事にするのは、困難や壁にぶち当たった時にどう生きるか、どう考えるか、どういう行動を起こすかを伝えることだ。1人の人間が苦難を超えていく時に何が必要だったのかということを、サッカー選手を通して読者に伝えていく。
過去の作品の制作した際の秘話などを盛り込んで、話をさせてもらった。