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トラウトの全盛期が危機、大谷は?
新型コロナと第2次世界大戦の対比。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/04/18 20:00
選手の全盛期というのは貴重なものだ。トラウトや大谷のような選手にとって、1年の価値は想像以上に大きい。
ディマジオも3年間の兵役があった。
何にせよ確かなのは、偉大な野球選手が「全盛期の貴重な3年間を棒に振った」という事実と、それは彼だけではなかったということだ。
ジョー・ディマジオは、ウイリアムスより3年早い1936年に21歳でデビューし、1941年には「56試合連続安打」という不滅の記録を打ち立てているが、彼もまた、1943年からの3年間、28歳から30歳まで兵役に就いている。
ディマジオと同年に17歳でデビューしたボブ・フェラー(インディアンス)は、2人よりも1年早い1942年から4年近く(1945年シーズン終盤にメジャー復帰)も兵役に就いている。
彼らはいずれも殿堂入り選手で、もしも、ウイリアムスが平和な世の中で兵役に就くことなく通算714本塁打以上を放っていたと言うのなら、ディマジオも通算2800安打(実際は2214安打 以下同様)、通算450本塁打前後(361本塁打)は記録していただろうし、フェラーも通算350勝(266勝)や、通算3500奪三振(2581奪三振)を記録していただろう。
トラウトの全盛期は……。
第2次世界大戦では、彼ら以外にも500人以上のメジャーリーガーが兵役に就き、日本プロ野球の沢村栄治(巨人)や、4番打者として活躍しながら投手もやったという「二刀流」の景浦将(大阪、現阪神)らのように戦地に散った選手もいる。
今回の疫病の世界的な流行でトラウトが全盛期を棒に振るような事態は起こらないだろうが、現時点でそう断言することに自信はない。
アメリカ合衆国が直面している事態は、発生当時「先が見えなかった」同時多発テロ「911」の時より遥かに深刻であり、無観客でプロ野球が開幕した台湾や、それに続こうとしている韓国や日本のような積極的な動きは、まだ想像すらできない。アメリカでは外出自粛が普通で、球団施設での自主練習すら許されていない。