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トラウトの全盛期が危機、大谷は?
新型コロナと第2次世界大戦の対比。
posted2020/04/18 20:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
4月15日の午後、日毎のニュース検索を終えてテレビのスイッチを切る直前、NBCスポーツの「Lunch Talk Live」に大谷翔平選手の同僚マイク・トラウト(エンゼルス)が出演しているのが目に留まった。どうやら彼の自宅とスタジオを繋いだネット・インタビューらしい。
話題はやはり、新型コロナウイルスの影響で活動休止中のメジャーリーグに集中し、トラウトが現在の状態や、キャンプ地で開催されるかも知れない変則的なリーグ編成(アリゾナとフロリダに分かれた15球団ずつの即席リーグ)について、優等生らしい答えを連ねていた。
やがて、ブロードキャスターがこんなことを訊いた。
「あなたは現役最高の選手と見られており、全盛期の真っ只中だと思うけれど、この事態によって、その一部が台無しになるかも知れないと考えたことはありますか?」
考えたこともない質問だったが、同時に「どこかで聞いたような質問」だとも感じた。その感覚の源が分かったのは、書類や書籍を整理していて古い取材ノートを見つけた数日後のことだった。
「最後の4割打者」と海兵隊の関係。
2002年7月に83歳で亡くなった「最後の4割打者」テッド・ウイリアムスを偲んで、彼が現役時代にプレーしたレッドソックスの地元ボストンのフェンウェイパークで開催された追悼イベントでの出来事が、自分でも読めないような殴り書きでノートに記されていた。
ウイリアムスの現役時代のポジションだった左翼の芝の上に、献花で作られた巨大な背番号9。一塁ベースには「521」、二塁ベースには「USMC」、そして、三塁ベースには「406」の数字や文字。
「521」はウイリアムスの生涯通算本塁打、「406」はシーズン最高打率だとすぐに分かったが、「USMC」が何のことなのか、最初は分からなかった。
恥を承知で、臨席したベテランの地元記者に尋ねた。今は鬼籍に入っているその人は、グリーンモンスターに貼られた写真バナー=ウイリアムスがパイロット姿で戦闘機に乗り込む姿を指差しながら、こう言った。
「United States Marine Corps=アメリカ合衆国海兵隊のことだよ。私はもしも、彼(ウイリアムス)が海兵隊員じゃなかったら、ルースの本塁打記録を抜いていたと信じているんだ。戦争に行ったお陰で彼の全盛期が台無しになったと思っているんだよ」