マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
3年生の技を途切れさせないために。
高校球児に頼みたい「お宝」伝承。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/04/20 19:00
日本の高校野球のレベルが上がったのは、先人たちの積み重ねがあればこそ。自分が何を残していけるかを考えることには価値があるはずだ。
自分の野球を後輩に伝承するために。
技を磨いて、“夏”や将来に備えようとするレギュラーや上級生にとって、春の実戦が少なくなるのはさぞ痛手であろうが、ボンヤリしていては、それを受け継いでいってほしい下級生にとっても、なんとも勿体ない空白の時間になりかねない。
自らの不運、不遇ばかりを嘆いていてもしょうがない。
ここはいちばん、自分のことは二の次にして心機一転。自らが構築してきた「野球」を、後輩に語り継いでいくための時間に使ってみたらどうだろう。
たとえば高校3年生の球児だって、「まだ子ども」だと言ってしまえばそれっきりだが、8歳から野球を始めていれば、野球経験10年の立派な「ベテラン」である。頼まれれば、後輩に語って聞かせる理論や極意の1つや2つ、間違いなく隠し持っているはずである。
学校の後輩に伝えるだけではなく。
チームの後輩たちを一堂に集めて一席ぶてば手っとり早いのだが、今は集会はご法度。こんな時こそ、お得意のSNSの出番であろう。スマホ、パソコンを使って、自分なりの野球理論を後輩たちに発信し、語り継いでおこう。
たとえばキャッチャーなら、オレなりの「配球」の考え方っていうのは……でもいいし、内野手だったら、打者のこんなしぐさから打球がこっちに飛んでくるのが予測できるんだ……でもいい。
バッティングに自信のあるヤツなら、こういうスイング軌道にしたらとんでもなく飛ぶようになったでも、追い込まれてからのしのぎ方はこんな感じ、でもなんでもいい。
欲をいえば、人から教わったことより、自分で気づいたこと、自分が思いついたアイディア。オリジナリティのある教えのほうが、いただくほうはありがたいような。
せっかく苦労して構築してきた理論、技術をタダで教えてやるなんて……そんなケチな了見、この非常時だ、さっさと捨て去ろう。
自分より、人のためになれば。そんな風に考えることが、“絆”のとっかかりというものではないか。