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帝京大・中野監督の葛藤と危機感。
「来年の箱根駅伝は想像できない」 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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posted2020/04/17 11:00

帝京大・中野監督の葛藤と危機感。「来年の箱根駅伝は想像できない」<Number Web> photograph by Satoshi Wada

帝京大の中野孝行監督は2005年に就任、今年まで3年連続シード権を獲得するなど強豪校に育てた。

大会の中止は残念だがほっともした。

 当然、競技面にも大きな影響が出ている。練習スケジュールは目標とする試合から逆算して立てていくが、試合の見通しが立たない現状では練習スケジュールを立てることさえもままならない。

 また、感染のリスクを考慮し、基本的に練習は自主練習にしている。2、3度、少人数のグループに分けて負荷の高い練習を行ったが、チーム内で力の差に開きが出ているのを実感したという。

 また、前半シーズン最大の目標となる関東インカレも、5月開催の中止(今年度の開催を目指す)が決まった。

 中野監督は「特に4年生はこの3年間苦労してきたのを見てきましたから、彼らが活躍する舞台を奪われるのはかわいそうですし、私自身、ものすごくつらい」と選手の心情を慮る。その一方で、心の内で「ほっとしたという気持ちがあったのも事実」だという。慎重に言葉を選びつつも、大会の意義についても言及した。

「満足に練習ができないなかで大会が開催されても、満足のいくパフォーマンスは発揮できません。それに、選手には、どこかに無理が生じることになると思います。こんな状況でも練習ができているチームもあるかもしれませんが、大会は練習の成果をアピールする場。多くの大学が満足に活動できていない状況で大会が開催されることには、どんな意義があるのか……」

来年の1月の箱根駅伝は想像できない。

 私は、失礼を承知で「来年の1月に箱根駅伝が開催されているのは想像できるか?」を尋ねた。中野監督の回答は「現状では想像できません」というものだった。

「学生たちには“(大会に向けて)やるぞ”と言ってきましたが、学生ハーフ、関東インカレとことごとく中止になり、悪い言い方だけど、肩透かしを食っている。彼らも、口には出さないまでも、本当に試合が開催されるのかと疑心暗鬼になっているところはあると思います。

 それに、現状として、収束に向かっているとは思えない状況ですからね。中止の判断をするのは勇気がいることですが、出雲駅伝や全日本大学駅伝だってまだ先ではありますが、本当にできるのか、今から検討する必要があるかもしれません。学生たちには、“箱根があるつもりでやろう”と言っていますが、やっぱり“つもり”なんですよね。“ある”とは断言できません」

 このような発言をすることは、もちろん中野監督自身、批判されることがあるのも承知の上だ。ただ、先の監督の言葉にもある通り、未曾有の事態をどう乗り越えるべきか、その答えは誰にもわからない。だからこそ、今は意見を出し合うべきなのだ、と。

【次ページ】 今は動かないことが大事。

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