スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
初めてNumberを買ってから40年。
したかったのはスポーツを書くこと。
posted2020/04/10 11:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Sports Graphic Number
Numberを初めて買ったのは、中学1年生の夏休みのときのことだった。
帰省中だった11歳年上の兄(ラジオやテレビに出ている兄ではない。念のため)が新聞広告を見て、こう言った。
「これは買わなければならない」
兄はやたらと興奮し、慌てていて、気仙沼の繁華街にあった文信堂書店に電話をかけて取り置きをお願いした。幸いにして、在庫はあった(このあと、売り切れていた)。
そのあと、兄と私のどちらが買いに行くかでひとしきり揉め、ジャンケンだか、言葉で押し切られたのだか忘れたが、結局、私が買いに行くことになった。
レジで名前を名乗ると、Numberという創刊されて間もない雑誌と対面した。
10号。
定価は300円。当時はまだ、消費税は導入されていない。
表紙は空振りしている長嶋茂雄だった。
高校1年生で買ったラグビー特集。
あれから40年。中学、高校時代に買ったNumberはいまも自宅の書棚にすべて保存されている。
私の実家は本にかけるお金には鷹揚だったが、さりとてすべて買えるほど潤沢ではない。小遣いをやりくりして、野球、ラグビーを中心とした特集を買っていた。
なかでも、1983年11月19日売り、私が気仙沼高校1年生の時に買ったNumber88号、『ラグビー・男の季節』は何度も読み返したし、影響を受けたと思う。
特に、巻頭に載っている当時の早大ラグビー部、大西鐵之祐部長へのインタビュー「魔術にあらず、“誠”』なり」は、いま読んでも素晴らしい。