スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
初めてNumberを買ってから40年。
したかったのはスポーツを書くこと。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySports Graphic Number
posted2020/04/10 11:30
生島淳氏が初めて寄稿してくれたNumber319号。1990年代はNBAの特集も多かった。
「ラグビーやってるやつは皆一緒」
早大ラグビー部入部の経緯、戦争体験。
戦後、大西氏は戦犯としてブラックキャンプに入れられそうになる。そこに入れば、絞首刑は免れない。しかし、ラグビーが彼を救った。大西氏は腰に『二年連覇』と書いた小さなラグビーボールをぶらさげていった。すると、調査でこんなやり取りがあったという。
大西 それ見て、その少佐、「お前、ラグビーやるのか。わしもやっとんたんや」というわけや。で、イギリスのラグビーの話なんかいろいろしてな。少佐は最後に、「お前のことを信用する」言うて、それでわし助かったんや、ほんとは。
このインタビューは、こんな言葉で締めくくられる。
大西 不思議でしょうがないですよ。ラグビーやってるやつは、日本だろうとイギリスだろうと、ニュージーランド、カナダ、どこ行っても皆一緒。ラグビーやっとるちゅうだけで、バカみたいに一緒になっちゃうんだなあ。ほんとに面白い。
この言葉は、そのまま2019年ラグビー・ワールドカップ日本大会で、各国の選手たちが示した価値にそのままつながる。
「こういうの、書けたらいいな」
この特集ではその他にも、1968年6月、大西鐵之祐監督率いる日本代表がオールブラックス・ジュニアを破ったドキュメントがある。多くの選手に話を聞き、再構成しているのだが、のちに私はこの手法を2015年のラグビーW杯について書いた連載『桜の真実』、そして2016年に上梓した『エディー・ウォーズ』で再現した。
高校時代に読んだ財産が、生きた。
そのときはたしか高校2年生になっていたが、
「こういうの、書けたらいいな」
と思ってはいた。しかし、東京に出てスポーツを書くに至るには、まだまだ先が長い。