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ブンデスリーガに日本人鍼灸師が!?
黒川孝一が考えるサッカー選手のケア。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/04/03 11:30

ブンデスリーガに日本人鍼灸師が!?黒川孝一が考えるサッカー選手のケア。<Number Web> photograph by Getty Images

2018-19シーズンのELでは4強進出するなど躍進したフランクフルト。日本人鍼灸師の黒川孝一もクラブで力を発揮している。

丁寧、実直な治療が信頼に直結。

 治療において、選手と円滑なコミュニケーションを取ることは重要だ。何をされるのかわからない、何をされたのかわからないままでは、選手も安心できない。

 もちろん、ドイツに渡ったからといってすぐドイツ語が話せるようになるわけではない。一般的な基本ドイツ語だけではなく、専門的で難解な医療系単語も扱えなければならない。プレッシャーも大きかったことだろう。

 だが、そうしたコミュニケーションミスが怪我につながることは許されない。選手と意思疎通をはかり、丁寧に、実直に治療してきたことが、いまの信頼に結びついている。

「最初は全然ダメでした。英語もできる方じゃなかったので、細かいコミュニケーションひとつもまったくわかりませんでした。契約のこととか、チームのルールとか。集合時間とか選手との約束、スタッフ同士のコミュニケーションなどで、最初は苦労していました。

 試合の時はロッカールームも邪魔になるとダメなので、なかなか入れてもらえなかった。だから紙に言いたいことを書くなど、いろいろ工夫していました。いまはそういう問題は少しもなく、試合の日も率先して仕事をさせてもらえる位置にはきたって感じです」

 腕一本で説得力のある仕事をする。それは、言葉でいうほど簡単なことではない。例年メディカルスタッフの入れ替えは頻繁に行なわれる。クラブ側から、シビアに契約延長をしないと告げられるスタッフもいたはずだ。

気づけばメディカルで一番の古株。

 そんななか黒川がクラブに在籍し続けているのは、その仕事ぶり、そして人間性が高く評価されているからだろう。3、4年目になると、新しく来たスタッフから「こういうときはどうしたらいいの?」と頼られる存在になってきたという。

「そのくらいからは対等に見てくれるというか、そういう立場になってきたなと思います。僕より前にいたフィジオとかはみんないなくなっちゃって、いまはメディカルスタッフで一番の古株になっちゃったんです」

 練習後や試合後には、いつも選手のためにスタンバイしている黒川がいる。選手が治療を求めたら、どんなときでもすぐに駆けつける。

 できるだけいいコンディションでプレーできるよう、細心の注意を払って選手の身体と向き合う。黒川のようなスタッフがいるから、選手たちは躍動し、スタジアムは劇場感を増し、あれほどの熱量が生まれるのだ。

(後編では鎌田大地へのケア方法などを取り上げています)

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