オリンピックへの道BACK NUMBER
競泳・日本選手権中止で感じたこと。
選手が意思表明しやすい土壌が必要。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byNatsuki Sakai/AFLO
posted2020/03/29 09:00
今年の日本選手権の会場となる予定だった東京アクアティクスセンター。五輪の競技会場のこけら落としとなる日は未定だ。
選手はここにピークを合わせてきた。
オリンピックシーズンの春の大会を選考会としていることも含め、強い選手をオリンピックに送りたいという意図があるのだろう。
それらを考えると、オリンピックが延期になった以上、選考レースも来年に延ばすという考え方もできたはずだ。
にもかかわらず、そのまま開こうとしたのは現場からの要望だったと連盟は説明している。
選手は、日本選手権で代表をつかむために計画を立てて強化を図り、ピークを合わせてきた。長い時間をかけて取り組んできた。
その成果を発揮する場がなくなることでショックを受ける選手がいるであろうことは想像できる。
実際、そうしたニュアンスのコメントを出している選手も見受けられる。
疑問も投げかけられていた。
一方で、開催することに疑問も投げかけられていた。
主に、日本代表としてオリンピックなどを経験してきた選手や元選手からだ。それぞれの表現で、開催することに意見を示していた。
大会は、取材にあたる報道陣も含め、入場者の中から1人でも感染者が出れば、即座に中止されることになっていた。それも大会を取り巻く環境を示す一端だし、国内外の情勢を見ても、リスクはさらに高まっていた。
こうした取り決めのもと、大会が最後まで行なわれるか不確実なことも不安を起こさせるだろうし、この状況で泳ぐことに懸念を抱く選手やコーチもいただろう。
中止ないしは延期を望む選手やコーチも、いなかったとは思わない。