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前代未聞のF1開幕戦ドタキャン。
舞台裏の7日間で起きていたこと。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2020/03/22 19:00

前代未聞のF1開幕戦ドタキャン。舞台裏の7日間で起きていたこと。<Number Web> photograph by AFLO

中止が決まり閑散とするピットレーンからスタッフたちが引き上げていく。FIAの決定はいかにも遅きに失していた。

開始まで2時間を切ってのドタキャン。

 すぐさま、すべてのチーム代表とFIA、F1、そして主催者が同じ席につき、オーストラリアGP開催の可否を巡る協議を行なった。話し合いは午前2時過ぎまで続いたが、それでも結論が出るまでには至らなかった。そこに数十億円とも言われる多額の開催権料を巡る駆け引きがあったことは想像に難くない。

 FIA、F1、主催者3者の駆け引きは13日早朝から再開された。サーキット開門時刻となった朝8時45分に、主催者がオーストラリアGPでの一切のイベントを中止すると発表し、観客の入場を拒否。

 その1時間後の午前10時すぎに、FIA、F1はようやくオーストラリアGPの中止を正式に発表した。セッション開始まで2時間を切っての、まさにドタキャンだった。

 ケアリー会長兼CEOは「レースをお見せできないことは残念だが、われわれは正しい決断を下した」と語った。

F1が興行であるのは確かだが……。

 しかし、彼らが中止の発表をしたとき、すでにハミルトンとチームメートのバルテリ・ボッタス、そしてセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)とキミ・ライコネン(アルファロメオ)が帰国の途についていたことを考えれば、決定は間違ってこそいなかったものの遅きに失した感は否めない。

 その後、ピレリのスタッフにも感染者が出ていたことが判明。感染が確認されていないほかのほとんどのスタッフも、帰国後は自宅での14日間の自己隔離生活が続いている。

 F1はスポーツであると同時に興行でもある。グランプリを開催することで得られる巨大な経済的報酬がF1を支えていることも十分、承知している。しかし、その代償としてファン、そしてグランプリ関係者とその家族の生命が脅かされるようなことだけは絶対にあってはならない。

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